おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

金融腐蝕列島 〔呪縛〕

2019-04-22 08:21:30 | 映画
「金融腐蝕列島 〔呪縛〕」 1999年 日本


監督 原田眞人
出演 役所広司 椎名桔平 矢島健一 遠藤憲一
   中村育二 仲代達矢 根津甚八 本田博太郎
   石橋蓮司 風吹ジュン 若村麻由美
   もたいまさこ 多岐川裕美 黒木瞳 佐藤慶
   木下ほうか 丹波哲郎

ストーリー
1997年、東京・日比谷。
丸野証券の利益供与事件による総会屋・小田島(若松武史)の逮捕により、300億円という不正融資疑惑が持ち上がった朝日中央銀行本店に大野木検事(遠藤憲一)率いる東京地検特捜部の強制捜索が入った。
ところが、朝日中央銀行の上層部は責任を回避しようとするばかり。
そんな上層部の姿勢に腹を立てた"ミドル4人組"と呼ばれる企画本部副部長の北野(役所広司)、同部MOF担の片山(椎名桔平)、同部副部長の石井(矢島健一)、広報部副部長の松原(中村育二)らはボード(役員)を総辞任させ、"ブルームバーグ・テレビジョン"のアンカーウーマン・和田(若村麻由美)の力を借りて新頭取に中山常務(根津甚八)を推すと、真相調査委員会を結成。
朝日中央銀行を闇社会や古い慣習などの"呪縛"から解き放ち、再生させようと東奔西走する。
しかしそんな事態に至っても、佐々木相談役(仲代達矢)だけは最高顧問として朝日中央銀行に居座ろうとしていた。
佐々木の娘婿でもある北野は、身内と対決しなければないないことに苦悩しながらも、小田島と佐々木の癒着が記された自殺した久山相談役(佐藤慶)の遺書を武器に彼を辞職、逮捕へと追い込む。
それから数日後、 朝日中央銀行の株主総会が行われた。
中山新頭取を中心に、一条弁護士(もたいまさこ)などの協力のもと、北野たちは闇社会との繋がりや行内の膿を放出することを株主に確約してこれを乗り切ることに成功。
こうして、朝日中央銀行は再生への一歩を歩き始めるのであった。


寸評
1997年の第一勧業銀行による不正融資事件をモデルにしていることは間違いない。
第一勧業銀行は1971年に第一銀行と勧業銀行が合併してできた銀行で、2000年に富士銀行、日本興業銀行とも合併し現在はみずほフィナンシャルグループを形成している。
不正融資事件とは、小池隆一という総会屋への利益供与事件で本店を家宅捜索され、近藤克彦頭取の退任、頭取経験者の多数逮捕や宮崎邦次元会長の自殺という事態を引き起こし、社会的に非難された事件ことである。
宮崎元会長の遺書は劇中でも紹介されており、調べてみると内容は実際の遺書通りであった。
その内容は、
今回の不祥事について大変ご迷惑をかけ、申し訳なくお詫び申し上げます。
真面目に働いておられる全役職員そして家族の方々、先輩のみなさまに最大の責任を感じ、且、当行の本当に良い仲間の人々が逮捕されたことは、断腸の想いで、六月十三日相談役退任の日に、身をもって責任を全うする決意をいたしました。
逮捕された方々の今後の処遇、家族の面倒等よろしくお願い申し上げます。
スッキリした形で出発すれば素晴らしい銀行になると期待し確信しております。
永年のご交誼に感謝いたします。 宮崎
というものであった。

さて映画だが、MOF担の椎名桔平とマスコミ代表とでも言うべきキャスターの若村麻由美がカッコイイ。
大蔵省は東大出身者が多いので、大手銀行のMOF担(大蔵省担当)は彼らと同期の東大卒が選ばれるらしい。
椎名桔平の片山は当時流行っていたノーパンしゃぶしゃぶの接待などを駆使して大蔵省の課長補佐(本郷弦)と人脈を築いているが、内心では彼を馬鹿にしている。
その接待疑惑も捜査対象になって銀行を去っていくが、その姿は颯爽としている。
課長補佐にガツンと一発くらわせて、ノーパンしゃぶしゃぶ狂いが摘発されることをほのめかせているが、その後に起きた大蔵省スキャンダルを想像させる。

若村麻由美のニュースキャスターはキャリアウーマンの象徴的存在だ。
まだまだ社会的地位を得ている女性が少なかった当時の先駆者的存在で、キャリアウーマンの登場を切望している言動が時々描かれている。
そのキャリアウーマンの象徴としてペットボトルが使われていて、彼女は缶コーヒーなどではなくミネラルウォーターを格好いいホルダーで愛飲するヘルシー思考な女性であることが分かる。
キャリアウーマンとしての能力の高さを表現していたのがペットボトルだったと思った。

銀行の役員て本当にこうなのかと疑ってしまうが、中堅幹部にこれだけの人材を抱えているのはさすがに大手銀行だと変なところに感心した。
彼等の銀行を辞めたあとの身の振り方に関する雑談の様子は、僕のサラリーマン時代を思い出して微笑ましく、彼らほどの実行力はなかったが、一杯やりながら会社の未来を語り合った時代が懐かしい。
3Sと称されたが、S1君、S2君が若くして他界し、S3の私は映画三昧である。