甘いくちづけ

静かなときが流れる、穏やかな土曜の午後。
キッチンに立つerimaはふと、リビングに視線を投げる。

レースのカーテン越しには秋の陽ざし.....
陽だまりに陣取るグレーの猫は、その濃密な毛を深々と上下させながら寝息をたて、幸せそのものを象徴するかのようで。
傍らの白いソファではゴンザと小さなちゃあこが並んで座り、時折言葉と視線を交わしては、親密な時を過ごしている。

「ああ、なんて幸せなのかしら」
そんな...愛しい者達が作る光景を眺めながらerimaは思う。
平和な家庭そのものの、夢のような光景。
『これがずっと続けばいいのに』

と、心の呟きが聞こえたかのように、ゴンザがちゃあこを抱き上げキスをする.....。

「ふふふっ♪なんて仲のいい父娘なのかしら」
溢れんばかりの幸せに包まれながらそれを見守るerima。
口元には穏やかな笑みを浮かべ.....

が、次の瞬間！

「ニャにすんのよっ！」
ゴンザの頬に鮮やかにクリーンヒットしたちゃあこの右フック。
みるみるうちにソファに沈んでゆくゴンザの身体。

「なぜ？...ちゃあこ、なぜなのっ!?」

衝撃の光景に立ち尽くすerimaは、ガラガラと音をたてて崩れてゆく幸せと足元に、めまいを覚え、思わずよろめく.......


って。
家族で変な芝居しておかしな写真を撮るなっ！
っつーか、なんでいつもちゃあこが悪役？って思うんだけど.....。

まあ、これはこれで仲良く平和な家族です（笑）