ちびくんが旅立ってから十日あまり。
次第に元気を取り戻してきたように見える私たち家族の、それぞれの胸の穴は、次第に拡がり始めている。
眠って起き。
そこにはちびくんの姿がもう見えないのだということに絶望し、その空虚さに、力なく佇むだけ。
互いに
「大丈夫?」
と気遣いあい、
「大丈夫」
と微笑んでは、本当は全然大丈夫じゃないことを、互いの目の中に見て取る。
ちゃあこは一日中おにいちゃんの姿を探して回り、お昼寝もあまり出来なくなった。
以前以上に甘えん坊になり、私たちにすがりつき、二人の間に挟まって、ひたすら身をすり寄せる。
家中走りまわっては、あまり上手に鳴けない猫なのに、大声でおにいちゃんを呼んで
「ぴゃおん!」
と鳴く。
私とゴンザには、ちびくんが旅立ったことはわかっているけれど、どうして彼に触れることが出来ないのか、なぜ姿が見えないのか、理解することが出来ない。
ちゃあこには、おにいちゃんが今ここにいないことはわかるけれど、なぜいないのか、理解出来ない。
約十八年間、毎日呼び続けた名前。
眠る時に感じた、足元の重み。
不器用なちびくんが床に散らばす猫砂に、彼のふわふわな、細かな抜け毛がなくなった寂しさ。
冷蔵庫を開けても、あの足音はもう聞こえないのだ。
猫のくせに、ちっとも静かでない、身体の固いちびくんの、
トコトコトコという、可愛い足音。
ゴンザは、ちびくんのための腕の隙間をどうしていいのかわからず、途方に暮れている。
眠っている時も辛そうで、目覚めればなお、辛そうだ。
そして.....。
『定位置にいる』ちびくんに話しかけるたびに、ゴンザの胸の穴が拡がってゆくのが、私には見える。
ちびくんのために。
前に進まなければならないのはわかっているけれど、今の私たちには何も見えない。
目覚めた時の空虚さに、ただ、途方に暮れるだけだ。
笑う事も出来るようになった。
以前のように、料理も、出かけることも、花をいじることも、出来るようにはなったのだ。
でも.....。
ちびくん。
だらしのない家族でごめんね。
もう一度、抱っこしたいよ。
次第に元気を取り戻してきたように見える私たち家族の、それぞれの胸の穴は、次第に拡がり始めている。
眠って起き。
そこにはちびくんの姿がもう見えないのだということに絶望し、その空虚さに、力なく佇むだけ。
互いに
「大丈夫?」
と気遣いあい、
「大丈夫」
と微笑んでは、本当は全然大丈夫じゃないことを、互いの目の中に見て取る。
ちゃあこは一日中おにいちゃんの姿を探して回り、お昼寝もあまり出来なくなった。
以前以上に甘えん坊になり、私たちにすがりつき、二人の間に挟まって、ひたすら身をすり寄せる。
家中走りまわっては、あまり上手に鳴けない猫なのに、大声でおにいちゃんを呼んで
「ぴゃおん!」
と鳴く。
私とゴンザには、ちびくんが旅立ったことはわかっているけれど、どうして彼に触れることが出来ないのか、なぜ姿が見えないのか、理解することが出来ない。
ちゃあこには、おにいちゃんが今ここにいないことはわかるけれど、なぜいないのか、理解出来ない。
約十八年間、毎日呼び続けた名前。
眠る時に感じた、足元の重み。
不器用なちびくんが床に散らばす猫砂に、彼のふわふわな、細かな抜け毛がなくなった寂しさ。
冷蔵庫を開けても、あの足音はもう聞こえないのだ。
猫のくせに、ちっとも静かでない、身体の固いちびくんの、
トコトコトコという、可愛い足音。
ゴンザは、ちびくんのための腕の隙間をどうしていいのかわからず、途方に暮れている。
眠っている時も辛そうで、目覚めればなお、辛そうだ。
そして.....。
『定位置にいる』ちびくんに話しかけるたびに、ゴンザの胸の穴が拡がってゆくのが、私には見える。
ちびくんのために。
前に進まなければならないのはわかっているけれど、今の私たちには何も見えない。
目覚めた時の空虚さに、ただ、途方に暮れるだけだ。
笑う事も出来るようになった。
以前のように、料理も、出かけることも、花をいじることも、出来るようにはなったのだ。
でも.....。
ちびくん。
だらしのない家族でごめんね。
もう一度、抱っこしたいよ。