ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

軍備と外交

2017-05-09 14:10:36 | 日記
「北朝鮮の脅威が間近に迫っている。備えをしなければならない。憲法9条
がそれを妨げている。よって憲法改正は急務である。」

この改憲派の主張に対して、先日私は、次のような見方を提示した。
「北朝鮮の脅威といっても、それは間近に迫ったものではない。早急に憲
法を改正してまで、軍備を急ぐ必要はない。軍備の拡大などよりも前に、
もっとやるべきことはあるのではないか」

「そのやるべきこと、って?」
「そ、それはだな・・・」
軍備の拡張よりも前に、まずもって政府がやるべきこと、それは外交的努
力である。私はそう言いたかったのだが、ストレートにそう主張すること
を躊躇わせる何かがあったことを、正直に告白しなければならない。

私の脳裏にあったのは、拉致被害者をめぐる北朝鮮との交渉の駆け引きで
ある。

小泉首相が訪朝して、日本人拉致問題の解決へのとば口を開いてから、も
う15年が経つ。その間に、かなりの回数の外交交渉が重ねられたはずだが、
この問題はいまだに解決されていない。一口に外交交渉と言っても、相手
は一筋縄では行かない強(したた)か者、大国アメリカですら手玉に取る
ぐらいだから、交渉能力においては日本よりも数段上手なのである。アメ
リカのオバマ前政権は、北朝鮮とまともに交渉することを慎重に避け続け
た。慧眼のオバマは、この曲者の力量がどれほどのものか、よく分かって
いたのだ。

それだけではない。まずもってやるべきなのは軍備の拡張ではなく、外交
的努力である。そうストレートに主張することを私に躊躇わせたのは、
「軍備こそ最良の外交手段ではないか」という思いである。各国の利害が
衝突した場合、自国の言い分が正当だという主張に説得力を与えるのは、
砲門の力、つまり軍事の力である。こういう考えから、日本は明治期以来、
軍備の増強に力を注いできた。欧米の軍事力に屈服して、不当な要求を飲
まざるを得なかった苦い経験が、そうさせたのである。

利害衝突の打開の手段を軍事力に求める点では、北朝鮮もアメリカも変わ
らない。国際政治を裏の部分で操るパワーゲームのただ中に身をおきなが
ら、日本が軍事力に頼らずに難局を乗り切るには、どうすれば良いのか。
その具体的な見取り図が、私には描けなかったのである。

ただ見取り図といえば、それほど具体的ではないものの、漠然とした見通
しのような思いが私のなかにあったことも事実である。それは、今の北朝
鮮が、かつての日本と同じような道をたどるのではないか、という思いで
ある。ひたすら軍備の増強に走り、ABCD包囲網によって生命線を絶たれ
た日本は、窮状を打開すべく、真珠湾のアメリカ海軍基地に奇襲攻撃をか
けるに至った。
中国の経済制裁によって生命線を絶たれた今の北朝鮮も、それがボディー
ブローのように効き始めたとき、米中韓にミサイル攻撃を仕掛けるのではない
か。そして、敗戦−没落の道をたどるのではないか。

とすれば、北朝鮮との関係において、外交交渉の鍵を握るのは、経済的な
さじ加減である。これなら日本の得意分野ではないかと思うのだが、読者
諸賢はどうお思いだろうか。
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