ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

広島市長と核廃絶の可能性

2024-08-07 10:01:02 | 日記
広島市長のあいさつ。市長は「アメリカ」の名前こそ出さなかったが、冒頭から核抑止論を話題に出し、これをはっきりと批判した。アメリカが広げる「核の傘」と、これに頼る日本政府の「拡大抑止」の考え方を明確に批判したもので、痛快だった。

広島原爆の日の、その記念式典の模様について、私はきのうのブログでこのように書いた。一応、褒めたつもりだが、私からすれば、広島市長はごく当たり前のことを述べたとの思いが強い。

ところがどうだろう。けさの朝日新聞は、第1面のトップでデカデカと次のように書いている。

広島、核廃絶を諦めない 市長『核抑止依存転換を』 被爆79年

米国による広島への原爆投下から79年となった6日、広島市の平和記念公園で、平和記念式典があった。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのパレスチナ自治区ガザへの攻撃が続き、核軍縮も停滞する中、松井一実市長は『心を一つに行動を起こせば、核抑止力に依存する為政者に政策転換を促すことができるはずだ』と述べた。

(朝日新聞8月7日)

これではまるで広島市長が、とてつもない偉業を成し遂げた英雄みたいではないか。
「広島市長はごく当たり前のことを述べた」だけだ、と私は書いたが、なるほど、広島市長という体制側の(現体制に組み込まれた)人間が(現体制批判を意味する)核抑止論批判を行ったことは、特筆すべきことなのだろう。

だが、この広島市長の言説がなにほどか岸田首相を動かし、少しでも現体制を揺るがしたかといえば、それははなはだ疑わしい。朝日新聞が伝える次の事実が、それをよく物語っている。

広島選出の岸田文雄首相は式典後、被爆者団体代表らと面会。来年3月にある核兵器禁止条約の第3回締約国会議へのオブザーバー参加を求められたが、『核兵器国を動かさないと現実は変えられない』と話した。
(同前)

核兵器国を動かさないと現実は変えられない、とほざくのなら、被爆地出身を売り物にしているキシダくんよ、あんたこそ核兵器国を動かすように動けばいいじゃないか、ーーとりあえず、仲のいいバイデン米大統領に一発、核抑止論批判をかましたらどうだ、と言いたくなるが、これに対して、キシダくんはこう答えるだろう。

「核廃絶はですな、一国だけでは実現できないのです。核保有国が全部そろって『一斉にドン』とやらなければ、だめなのです。ゴルバチョフソ連書記長と、レーガン米大統領が1985年に会談をしたことは憶えていますよね。このことが機縁となって両国間で核兵器削減条約が締結されたことはご存知の通りですが、それでも今はまだ核廃絶からほど遠いのが現状です。要するに、核保有国が全部そろって『一斉にドン』とやらなければ、核廃絶は実現しない。私なんかがどう動いたって、この現実は変えられないのです、はい」

各国のリーダーを敗北主義者にしてしまう岩盤のようなガチガチの現実がある。人類が作りあげたこのガチガチの現実が、総じて彼らを核抑止論へと走らせる。こうして核廃絶は、夢のまた夢になる。ーーああ、人間ってなんて度しがたい生き物なのだろう。


コメント
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