蟻の這い出る隙もないほど、ぎしぎしと監視の目を光らせ、批判を頑として許さない厳酷な統制下の社会。そんな社会で、やっと現体制に対する批判の牙が鳴らされた。これは充分「蟻の一穴」になり得るのではないか。こんなニュースを聞いた。
「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、地方議会の野党議員が公然と撤退すべきだと訴える一幕があり、軍事侵攻に対する不満の広がりもうかがえる事態となっています。
ロシア極東の中心都市ウラジオストクがある沿海地方の議会で27日、野党・共産党に所属する議員が追加議題の発言として、プーチン大統領に宛てたとする文書を突然、読み上げました。(中略)
そのうえで『軍事的な手段での成功は不可能だ』として、ロシア軍の即時撤退を求め、同じ共産党に所属する別の議員1人が拍手しました。」
(NHK NEWS WEB 5月27日配信)
一地方議員が放ったこの批判の矢は、だが正確にいえば、強固な堤防が瓦解しはじめた予兆の一つにすぎない。ロシアのプーチン体制がやっと崩れはじめた。これを示す証は、すでにあちこちにあふれている。こんな具合だ。
「ウクライナ侵攻後、ロシアとベラルーシから脱出する国民が後を絶たない。両国とも厳しい言論統制が敷かれ、国際社会から経済制裁が科された。あるロシア人学生は『軍事演習』への兵役を拒み、日本に渡った。あるベラルーシ人の女性はジョージアへ。背中を押したのは、戦争への失望や怒り、ソ連時代回帰への恐怖だ。」
(JIJI.COM 3月25日配信)
私は当初、プーチン体制の崩壊はロシア軍将校たちのクーデターによって引き起こされるはずだと考え、これはすぐにでも起きるのではないかと予想していた。だがこの予想に反して、崩壊は綻びの形をとり、意外なところから始まったと言うべきだろう。
強固な堤防を崩すのが小さな蟻の一穴であるように、厳酷なプーチン体制を崩すのは名もない民衆の不満であり、怒りであり、批判だということである。蟻の思いも天に届く。
さて、今後はどうなりますことやら。
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