ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

同情するならカネをくれ!

2020-12-22 13:41:09 | 日記
おととい日曜日のことになる。NHKスペシャル「パンデミック激動の世界」を見た。以下のような内容だった。

(1)コロナ・ワクチンの開発で、日本の研究はアメリカや中国に後れをとり、英仏などヨーロッパ諸国にも追い越されている。
(2)その原因として、日本の大学における貧弱な研究環境があげられる。
(3)日本の大学が優秀な人材を充分に確保できていないからだが、それは人件費が圧倒的に不足しているからである。
(4)日本の大学が予算を充分人件費に割けないのは、国からの運営費交付金が削られているからである。

(1)から(4)までの見解が一々どれほど確かなのか、突っ込みどころ満載だが、全体としてのこの番組の主張は、「日本の医学研究がコロナ禍で満足した成果を出せないのは、国が研究予算をケチっているからだ」というものだった。

この番組の趣旨からは若干離れるが、国の対策がお粗末で若手の研究者が育たない現状は、私自身が身をもって見聞している。私の場合は文系(人文社会系)だが、大学院の博士課程を修了しても若手が研究職にありつけない苛酷な現状があり、この現状は理科系の場合はもっとひどい。理系の若手研究者は、ドクター課程を修了した後、「ポスドク」と呼ばれる期限付きのポストに何とかありついて、その後、同様の期限付きポストを転々と渡り歩くことになる。彼らは安定した環境で、落ち着いて研究に専念することができない。その不安な気持ちは、私自身が40年ほど前、ほんのちょっと経験したことがある。

2、3ヶ月前のことだったか、ガースー首相が日本学術会議の人選にいちゃもんをつけて、「これは学問の自由を奪うものだ。けしからん」と騒がれたことがあった。「学問の自由」がない現実に日々辟易している若手研究者たちは、インテリ・ジャーナリズムや野党議員のこうした政府批判の言い種を聞いて、苦笑せざるを得なかっただろう。日本学術会議のメンバーはいわば勝ち組、自分たちはスタートラインにもつけない惨めな負け組なのだ。

「同情するならカネをくれ!」。これは25、6年前にヒットしたテレビドラマ「家なき子」で、ヒロインの安達祐実が口にしたセリフだが、このセリフを心の中で叫んだ若手研究者も少なくなかったはずだ。

NHKスペシャル「パンデミック激動の世界」は、若手研究者の苦しい現状に光を当て、彼らのクレームを代弁した点で、好感が持てた。もっとも元文部大臣・有馬朗人の生前の与太話は余計だったけれどね。
コメント
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