きのうは理性の判断に従って、リハビリ・デイサへの「出勤」をとりやめた。休むと決めるに当たって、一つ気になったことがある。デイサの利用者・D爺さんのことである。
アラウンド・エイティのこの爺さんは、先週、帰りの送迎車の中で、「オレも若いころはどうしようもない悪ガキだったよ」と呟いたのである。ふだん寡黙なD爺さんのこのカミングアウトに感銘を受けた私は、(送迎車を運転していた)生活相談員のA子さんに相談し、次の週にD爺さんの昔話を聞く会を開催することにしたのだった。
先週の次の週といえば、今週のことであり、つまりは(私が「欠勤」を決めた)きのう当日にほかならない。D爺さんの昔話を聞く会を開催しよう、そう言い出しておきながら、言い出しっぺの私が休むのは申し訳ない気がしたが、背に腹は変えられない。今度顔を合わせたら、D爺さんには丁重に謝ることにしよう。
でも、D爺さんはどうして「オレは昔、悪ガキだった」などと言い出したのだろうか。そのことも気になっていた。当日、送迎車内で交わした会話の文脈を思い出してみた。
「私、カレシにフラれたんですよ。結婚は当分、お預けです」
A子さんがそう言ったので、
「結婚をするのなら、(所長・兼・トレーナーの)Eさんのような人が良いですよ。ああいう家庭的で、やさしい感じの人がね」
私がそう答えると、
「でも、ですねえ」
A子さんはそう言って笑いだした。
「でも、Eさんはもう結婚していますから」
A子さんのそういう答えを私は予想したが、返ってきたのはまったく別の答えだった。
「でも、ですねえ。あたし、ああいう人は好きにならないんですよ」
嫌いではない。嫌いではないが、恋愛感情が湧かないから、Eさんのタイプは結婚の対象にはならない。A子さんはそう言おうとしているのだ。私はこう答えた。
「ああ、女性は不良っぽい男が好きになると言うからな。マッチのようなヤンチャなタイプとか、ちょいワルおやじのタイプとか・・・」
そういうタイプに惹かれる気持ちはわかるが、そういうタイプと結婚したら、苦労をすることになるぞ。そう言いたかったが、私はその言葉を飲み込んだ。そんなことはA子さんのほうがよくわかっているはずだ。そう思ったのである。
「そうなんですよぉ」
A子さんの口ぶりには、「わかっちゃいるけど・・・」のニュアンスが込められていた。
「オレも若いころはどうしようもない悪ガキだったよ」
E爺さんの呟きは、その後に出たのだった。
「オレも若いころは悪ガキだったから、女の子にはモテたんだぜ」
E爺さんはそう自慢したかったのだろうか。俄然、興味が湧いてきた。来週はぜひE爺さんの若かりし頃の武勇伝を聞かせてもらうことにしよう。
あ、それもコロナの出方次第だけど。
アラウンド・エイティのこの爺さんは、先週、帰りの送迎車の中で、「オレも若いころはどうしようもない悪ガキだったよ」と呟いたのである。ふだん寡黙なD爺さんのこのカミングアウトに感銘を受けた私は、(送迎車を運転していた)生活相談員のA子さんに相談し、次の週にD爺さんの昔話を聞く会を開催することにしたのだった。
先週の次の週といえば、今週のことであり、つまりは(私が「欠勤」を決めた)きのう当日にほかならない。D爺さんの昔話を聞く会を開催しよう、そう言い出しておきながら、言い出しっぺの私が休むのは申し訳ない気がしたが、背に腹は変えられない。今度顔を合わせたら、D爺さんには丁重に謝ることにしよう。
でも、D爺さんはどうして「オレは昔、悪ガキだった」などと言い出したのだろうか。そのことも気になっていた。当日、送迎車内で交わした会話の文脈を思い出してみた。
「私、カレシにフラれたんですよ。結婚は当分、お預けです」
A子さんがそう言ったので、
「結婚をするのなら、(所長・兼・トレーナーの)Eさんのような人が良いですよ。ああいう家庭的で、やさしい感じの人がね」
私がそう答えると、
「でも、ですねえ」
A子さんはそう言って笑いだした。
「でも、Eさんはもう結婚していますから」
A子さんのそういう答えを私は予想したが、返ってきたのはまったく別の答えだった。
「でも、ですねえ。あたし、ああいう人は好きにならないんですよ」
嫌いではない。嫌いではないが、恋愛感情が湧かないから、Eさんのタイプは結婚の対象にはならない。A子さんはそう言おうとしているのだ。私はこう答えた。
「ああ、女性は不良っぽい男が好きになると言うからな。マッチのようなヤンチャなタイプとか、ちょいワルおやじのタイプとか・・・」
そういうタイプに惹かれる気持ちはわかるが、そういうタイプと結婚したら、苦労をすることになるぞ。そう言いたかったが、私はその言葉を飲み込んだ。そんなことはA子さんのほうがよくわかっているはずだ。そう思ったのである。
「そうなんですよぉ」
A子さんの口ぶりには、「わかっちゃいるけど・・・」のニュアンスが込められていた。
「オレも若いころはどうしようもない悪ガキだったよ」
E爺さんの呟きは、その後に出たのだった。
「オレも若いころは悪ガキだったから、女の子にはモテたんだぜ」
E爺さんはそう自慢したかったのだろうか。俄然、興味が湧いてきた。来週はぜひE爺さんの若かりし頃の武勇伝を聞かせてもらうことにしよう。
あ、それもコロナの出方次第だけど。