ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

自衛隊「便利屋」発言に寄せて(続)

2020-12-10 11:28:05 | 日記
”ヒゲの隊長”こと陸上自衛隊出身の佐藤正久議員が「自衛隊は便利屋ではない」と文句をつけたという。
このことを知って、私は頭をガツンと一発殴られた気がした。私は「自衛隊の災害派遣は美しい人命救助の姿だ」、「これこそあるべき『公助』の姿だ」と感じ入っていたのたが、その甘い(独り善がりの?)思い込みを打ち砕かれたと感じたのだ。

コロナ禍の只中にある当事者にとって、救助に来てくれる自衛隊は、頼もしい最後の砦と感じられたに違いない。その彼らが「自衛隊は便利屋ではない」、「自助が基本だ。他人(ひと)頼みの他力本願も大概にしろ!」と言われたら、彼ら苦境にあえぐ人々は、最後の望みを絶たれ、絶望の淵に沈む思いだろう。

いや、”ヒゲの隊長”は自分の見解を述べたのではない、自衛隊から送り込まれた代議士として、現場の自衛隊員の正直な気持ちを代弁しただけなのだ、という受け止め方もあるかもしれない。だが、”ヒゲの隊長”が言う通り、現場の自衛官が人命救助を使命感からではなく、「上官の命令だから、仕方ない」と、しぶしぶ応じ、いやいや業務をこなしているだけだとしたら、救助される側は、救助にあたる自衛隊員に感謝の念も、また尊敬の念も懐くことはできないだろう。

現場の自衛官の気持ちもわからなくはない。立憲民主党の枝野代表は「災害派遣せざるを得ない状況になったのは、政府の無策が生んだ人災だ」と政府のコロナ対策を批判したというが、同じ見方から「政府の無策の尻拭いを、なんで俺たちがしなければならないのだ!」と義憤を感じる自衛官もいるに違いない。

また、(サイト「zakzak」が伝えるように)《大阪は時短要請効果ナシ…対象外の夜の街でドンチャン騒ぎ》といったトンデモな実態があるのだとしたら、「俺たちはなんでこんなアホどものために汗をかかなければならないのだ」と怒りを禁じ得ない自衛隊員もいることだろう。

だが、自衛隊は無能な政府の尻拭いや、一部の不心得者のために働いているのではない。医療機関の機能が逼迫しているために、コロナに感染しても治療を受けられず、苦しんでいる人たちがいる。そういう困っている弱者を助けるために、自衛隊は援助の手を差し伸べているのではないか。

それだけではない。「戦力の不保持を謳う憲法9条のせいで、自衛隊は日本国民から正当なものと認知されていない、だから早急に憲法を改正すべきだ」ーーアベ自民党はそう主張してきた。だが、大方の国民は(災害派遣にあたる)自衛隊を、自分たちの命を守ってくれる最後の頼みの綱としてあたたかく迎え入れ、感謝し、尊敬すらしている。そんな国民の思いを打ち砕く「便利屋」云々の言辞を吐きながら、「俺たちの存在をきちんと認知しろ」の言い種はないだろう。「俺たちは戦闘集団なのだ。御用聞きの便利屋じゃないんだぜ」はないだろう。

一つ言っておきたいのだが、あんたたちは戦闘集団として、敵と戦うことを本来の任務としているんだよな。それじゃあ、あんたたちは一体、何のために敵と戦うのかね。日本国民の生命を守るためではないのか。
だったら、市民、県民、道民の生命を守るための災害派遣の業務も、あんたたちは自分の使命として積極的に引き受けるべきではないのか。なにも中国や北朝鮮のミサイルだけが戦うべき敵ではない。日本国民の生命を脅かす敵は、それだけではないんだぜ。
コメント
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