おはようございます。
少し前の話になりますが、ドラマ・レビューの話になりますね。
ま、これも、勉強って事になりますかね。
さて、月曜日の午後3時過ぎ・・・僕とユキちゃん(28)は仕事を一段落させて、
事務所の大部屋で、蜜柑を食べながら、お茶を飲んでいました。
「しかし、うちの事務所は蜜柑の差し入れがすごいね」
「最近、食べても食べても、全然減らないような気がするなー」
と、僕。
「うちの社長が蜜柑を大好きなのを、皆、知っていてくれてるからでしょうね」
「でも、蜜柑にお茶って・・・気分がほっこりとして、冬の楽しみでもありますよねー」
と、ユキちゃん。
「うん。蜜柑の甘さが、気分をほっこりとさせてくれるね」
「これも、社長の人徳のおかげかな」
と、僕。
・・・と、そこへ社長室から出て来るのは、御島社長(31)そのひとです。
「また、わたしの話?そういうのって、なんとなく、聞こえてくるのよねー」
と、御島さんは言いながら、僕の隣の席に座ると、
「ね。昨日の「真田丸」見た?いつも通り、ワクワクしちゃったわよねー」
と、いつも通り、笑顔で話しだす御島さんなのでした。
「最近、「真田丸」を見ていて思うのは、「これは三谷幸喜作の歴史をモチーフにした喜劇舞台・・・を映像化したものなんだ」って」
「そういう事を感じるのよね。だから、普通に笑いが散りばめられていて・・・三谷幸喜作品を大好きなわたしからすると」
「もう面白くってたまらないのよね・・・」
と、御島さん。ルンルンな感じである。
「わたし、大河ドラマの不満っていろいろあるんだけど、その中でも、一番の不満が」
「「だいたい筋が予想出来る」って言うモノだったの。信長が出てくれば、「いつ本能寺の変か?」とか」
「幕末の作品なら「坂本龍馬はそもそも出て来るのか?薩長同盟への関わり方はどう描かれるのだろう?」とか」
「まあ、朝ドラの内容を知りながら、朝ドラを見ているようで・・・内容がだいたい類推出来る・・・ハッキリ言って、そこがつまらない所なのよね」
と、御島さん。
「それは昨年・・・「あまちゃん」がBSで全話再放送されても、全く話題にもならなかった事でも、証明されていますね」
と、ユキちゃん。
「でしょう?優れた作品でも、内容を知っていたら、興味が湧かないのよ。大河ドラマはそういう弱みがあって」
「視聴率も上がらなかった。でも、それは歴史が主体だったからなの。見知ったドラマを再現していたから、そうなったのよ」
と、御島さん。
「「真田丸」はその点違うと?」
と、僕。
「「真田丸」は、まず、喜劇と言う立ち位置から始まるわ。しかも、視聴者を笑わせる目的がまず、設定されていて」
「出て来る素材やモチーフはある意味、二の次三の次なのよね。むしろ「大河ドラマの面白さってこういう所にあるんだぜ」って」
「そういう意識で描かれているから・・・その上で、三谷幸喜作品が勇躍するから、面白いのよ・・・」
と、御島さん。
「なるほど・・・この「真田丸」は、あくまで三谷幸喜さんの喜劇舞台作品・・・歴史は単なるモチーフに過ぎないんだ」
と、僕。
「まあ、わたしが真田物語をよく知らないと言う幸運もあるけどね。でも、ここまで三話見てきたけど、作りが丹念じゃない」
「例えば、一話、ニ話で、描かれていた・・・大名家でも野伏に襲われて命を落としそうになる事もあると言う話や」
「今回の・・・真田家も国衆のひとりで・・・実は家の大きさもあまり他と変わらず・・・実際、盟主でもなかった・・・」
「そこの説得からまずかからないと織田信長に会いにすら、行けなかった・・・と言う真実を描いていたのも」
「すごく新鮮だったわ」
と、御島さん。
「ああ。それは確かに新鮮でしたね。僕は真田昌幸が武田家の重臣だったから、国衆は、割りと部下的な感じなのかと」
「思っていましたから・・・」
と、僕。
「でしょう?その中でも代表して寺島進さんと西村雅彦さんが出てきたけど・・・もう、このキャスト唸るわよね」
と、御島さん。
「はい?それはどうして?」
と、僕。
「わたしは、三谷幸喜作品の喜劇の面白さって・・・現実にいそうなキャラをさらにデフォルメして」
「「そうそう、こういう面倒くさい人いるのよね!」って言うキャラに仕立て上げて、さらに面白い脚本で動かしている所って」
「思っているのね。今までは、その中心人物は「常識的で真面目だけど、気が小さくて腹芸の出来ないオトコ」洋ちゃんだったわ」
と、御島さん。
「洋ちゃん、面白いですよ。でも、このキャラは、大河ドラマの想定顧客No.1のサラリーマンの父親像を想定していますよね?」
と、僕。
「わたしもそう思うわ。中堅サラリーマンの悲喜劇を彼に演じさせて、視聴率をあげる作戦だもの。それはわかるの」
「だから、彼が困れば困るほど、サラリーマン達は可笑しがるわ。きみまろさんが、実年夫婦にウケがいいように、ね・・・」
「ま、ある意味、自虐的な笑いがそこにはあるけど・・・ある意味、王道だわ」
と、御島さん。
「そうか。洋ちゃんは、サラリーマンを描いたキャラだったんですね。でも、洋ちゃんは、10代、20代の女性にもすごい人気ですよ」
「わたし、こういうオトコはタイプじゃないけど、なんとなく笑ってしまうような・・・弟キャラかもしれないですね」
と、ユキちゃん。
「そうね。それも正しい見方なんじゃない?彼が困れば困るほど、「真田丸」は面白くなる。さらに言えば・・・」
「わたしが今回好きだったのは・・・その洋ちゃんの奥さん・・・一瞬しか出てこないけど、もう完全にベタな演技で、舞台の役者さんよね。あの女性」
と、御島さん。
「洋ちゃんの前で「信之さんは真田の跡取りの長男で・・・」って何度も繰り返して、二度目に「それわかったから」と一蹴されてた」
「病気がちな奥さんね。確かに喜劇はベタな程、面白いんだよね。もう、いかにも、「わたし、すぐ死にます」っていう」
「フラグ立ちしてたもんな・・・」
と、僕。
「大河ドラマは、そういうフラグ立ちを読み取って、楽しむのも・・・ひとつの大事な楽しみ方ですよね」
と、ユキちゃん。
「三谷幸喜さんは、そういう「大河ドラマのお約束」もちゃんと意識して書いているわ。あと、戦国大河ドラマのお約束は」
「毎回、戦シーンがある事ね。ま、チャンバラシーンがあるからこそ、主役のカッコいいシーンに女性も男性も、萌えられるって事じゃない」
と、御島さん。
「それ、いいですよね。主役がいかに使える人間かが、描かれて・・・信繁さんのカッコよさが際立っていた」
「そういう意味で言えば、洋ちゃんの方は・・・どんでん返しが面白かったですね」
「そう言えば、御島さんは寺島進さんのような男臭い男性が好きなんですよね?」
と、僕。
「もう、当たり前じゃなーい。寺島進さんに「よ、今日、飲みに行くか?」なんて誘われたら、絶対に飲みに行っちゃうもの」
「あの「アニキ」的な男臭ささ加減が、わたしは大好きだわ」
と、御島さん。
「彼はキャラ的には、どういう意味を持たせているんでしょう?主役達を助ける、怖いお兄さん的なキャラですか?」
と、僕。
「そうね。世の中の裏の裏をどこまでも知っている、主役達を助けてくれる、オトナのオトコ・・・真田昌幸お父さんの盟友と言ってもいいキャラよね」
「ま、サラリーマンの洋ちゃんとは、まあ、住んでる世界が違うと言う所かしら。でも、情には熱くて、ひとの気持ちのわかるオトコ」
「・・・っていうか、世の中で苦労をしてきたからこそ、ああいう地位に登れたからこそ、洋ちゃんの気持ちもわかる」
「・・・そういう苦労人の位置よね。だから、逆にこれから苦労する洋ちゃんには、寺島進さんの気持ちなんてわかるはずも無いのよ」
と、御島さん。
「そういう意味で言うと、寺島進さんは、信繁の方を買っている感じで描かれていましたね」
と、ユキちゃん。
「信繁の方が仕込みがいがあると感じてるって表現でしょうね。若い頃の自分を見ているって感じかしらね」
と、御島さん。
「まあ、でも、今回、そういう意味では、「こういう面倒くさいオヤジ・・・世の中にいるのよねー」のもうひとりは」
「やっぱり、役者バカ・・・藤岡弘、さんの本多忠勝さんよねー。もう、自分の正義は皆も理解してくれると勝手に解釈して」
「自分の価値観を押し付ける・・・で、いて他人の価値観は一切受け付けない・・・そういうオヤジを熱演していて」
「その個人のあり方と役のあり方がピッタリリンクしていて、笑えちゃうのよねー」
と、御島さん。
「「殿、それが武将の道ですぞ」みたいな事を言い出して、その価値をすぐに押し付けるから・・・家康に煙たがられている」
「・・・なんか、そういう、ある価値観に凝り固まった・・・融通が効かない、オヤジとかいるよねー」
「僕が一番苦手としているパターンだけど・・・この人、本多忠勝だから、洋ちゃんを気に入って、お嫁さんをくれる人なんだよね」
と、僕。
「多分、洋ちゃんの常識的な正義漢・・・と言う所が本多忠勝に気に入られる作劇になるんでしょうけど」
「この二人が義理の親子になるってだけでも笑っちゃうわよね。妙にウマが合う・・・洋ちゃんが、本当の父親とはウマが合わないから」
「余計、そこが強調されるように感じるわね・・・でも、それって、洋ちゃんの経験が超不足しているだけなんだけどね。人間小さいし・・・」
と、御島さん。
「逆に本多忠勝さんは、殺生の経験が深いから、自分なりの正義感が確立しちゃったパターンですか」
と、僕。
「そうね。いずれにしろ、こういう凝り固まった価値観に支配された人間は、使いづらいのよね」
「戦は超強いかもしれないけれど・・・先も読めないし・・・寺島進さんの方が、先は読めるのは確かだわ」
「真田昌幸さんの価値を理解出来るわけだから・・・」
と、御島さん。
「寺島進さんと言えば・・・コンビで出てきた西村雅彦さんの御島さんの評価はどうなんです?」
と、僕。
「え?この人、ケツの穴の小さい役がお似合いな、ゲゲゲの鬼太郎のネズミ男みたいな気の小さいオトコでしょう?」
「女性には当然、人気無いんじゃない?」
と、御島さん。バッサリ。
「ま、西村雅彦さんが実際どういう人間かは、別に良くて・・・そういう猜疑心の固まり役は、最適任よね」
「実際、長い間、田村正和さんの引き立て役をやっていたんだから・・・」
と、御島さん。
「で、だいたいこういうオトコって、殺されてしまう運命にあるんだけど・・・さすが三谷幸喜さんと古い仲間だけあって」
「いい場所に使うわよね・・・」
と、御島さん。
「今回、面白かったのは、やっぱり、寺島進さんと西村雅彦さんが真田昌幸さんを織田信長に売ろうとしたエピですよね」
「洋ちゃんも密書を上杉景勝に渡す命令をされて、勇躍その命令を果たすべくサスケと一緒に行動するんですけど」
「二人の謀反に遭い・・・って言う話でしたから・・・そこから、それが真田昌幸発案の謀略だった事が後でわかると」
「胸がすくって言うか・・・これこそ、歴史物語の深さと面白さだとわかりましたね」
と、ユキちゃん。
「そうなんだよね。あの寺島進さんが、「わたしは、真田昌幸に乗ったのだ」と言ったあたりの芝居はゾクゾクしたもんね」
「相変わらず、洋ちゃん・・・「は?こ、これはどういう事で?」みたいになっていましたけど」
「実際、視聴者のサラリーマン達も、洋ちゃんの意識で見ているから・・・「そ。そういう事なの!やるじゃん、真田昌幸!」」
「みたいになったでしょうね」
と、僕。
「うん。今回、そこに一番、すっごくゾクゾクしたし、面白かった。ほんと、三谷幸喜作品の良さが集められた作品になっているもの」
「もう、ホント、すぐに次が見たいって思っちゃうわ」
と、御島さん。
「次は織田信長さんや、明智光秀さんが出て来るはずですからね。安土城の天主閣の唯一の主、「天主」織田信長さんの」
「傍若無人ぶり・・・見られるんじゃないですか!」
と、ユキちゃん。
「おっと、その話の前に、男性陣としては、楽しみだった、長澤まさみちゃんが出てきましたけど」
「彼女もコメディエンヌにするつもりですね、三谷幸喜さんは」
と、僕。
「本来、正統なお姫様役くらいやっていてもよさそうな長澤まさみちゃん・・・だけど、実際は、真田昌幸の臣下の娘」
「・・・どうも真田信繁さんにすれば、気安い友人役だったわね。堺雅人さんが惚れている女性の為に・・・櫛でもあげたら」
「的なアドバイスもしている様子・・・そういう三枚目に使っちゃう所がいいのよね。でも、それくらいこなせそうで」
「長澤まさみちゃん・・・ちょっと、これから面白い感じよね」
と、御島さん。
「堺雅人さんに割りと冷たくされるんだけど・・・気があるのは、長澤まさみちゃんの方って、表現でしたからね」
「「あ、足やっちゃったみたい。先に行ってて」みたいなベタな芝居がまた、上手いんだよなー。ちょっとわざとらしいくらいベタ」
「やっぱ、ベタは、喜劇の基本だねー」
と、僕。
「いずれにしろ、今回は、真田昌幸家が置かれた状況を洋ちゃんを中心に紹介させて・・・全然一枚岩では無い信濃って感じで」
「描かれて・・・真田昌幸は悪い奴・・・みたいな感じで、西村雅彦さんがニセの手紙を織田信長に持っていく・・・」
「それを真田昌幸は、最初から見越していて・・・その状況をどう利用して、織田信長のこころを取るか」
「・・・そういう話になりそうですね」
と、僕。
「もうね。先が読めないでしょう?西村雅彦さんがそこで殺される事になるのか・・・西村雅彦さんを一回使いするのか」
「そこも見モノ。織田信長に会いにいく、真田昌幸さんと堺雅人さん・・・しかし、見た?堺雅人さん・・・」
「ただ、路傍の石に座っているだけで、少年感がはちきれんばかり・・・わたし最近わかったけど」
「男性は少年感が出せるうちは、女性に恋されるのよ。これが、おっさん感が出始めちゃったら、恋はされないわよね」
「・・・そういう意味じゃあ、寺島進さんは、アニキ感が出てたわよね。そ。少年感→アニキ感が正しい成長なのよ」
「・・・→おっさん感の男性は、もう恋とは関係ない感じよね」
と、御島さん。
「確かに、堺雅人さんの少年感は、僕も驚きました。あれ、高校生くらいの感じの芝居ですもんね」
「すごいもんだ・・・」
と、僕。
「やっぱり、日本文化・・・「餅は餅屋」って事なんでしょうね」
「「小劇場界の微笑みのプリンス」・・・堺雅人さんは、過去、そう呼ばれていたみたいですよ」
と、ユキちゃん。
「三谷幸喜さんも・・・演劇界の叩き上げな人だもの」
「そういう意味では、堺雅人さんと三谷幸喜さんは、運命的な出会いだったのかもしれないわ」
と、御島さん。
「その二人を始めとして、皆が全力で作っている、大河ドラマ「真田丸」。今、見なきゃ、絶対損するわ。これだけは誓ってもいいわ」
「歴史を知らない女性でも、笑える能力さえあれば、全力で楽しめる感じだもん。しあわせな気持ちになりたければ、見なきゃ、ね」
と、御島さん。
「御意。僕も同じ思いです」「わたしも」
と、僕ら二人は、御島さんの言葉に、素直に同意した。
(おしまい)
少し前の話になりますが、ドラマ・レビューの話になりますね。
ま、これも、勉強って事になりますかね。
さて、月曜日の午後3時過ぎ・・・僕とユキちゃん(28)は仕事を一段落させて、
事務所の大部屋で、蜜柑を食べながら、お茶を飲んでいました。
「しかし、うちの事務所は蜜柑の差し入れがすごいね」
「最近、食べても食べても、全然減らないような気がするなー」
と、僕。
「うちの社長が蜜柑を大好きなのを、皆、知っていてくれてるからでしょうね」
「でも、蜜柑にお茶って・・・気分がほっこりとして、冬の楽しみでもありますよねー」
と、ユキちゃん。
「うん。蜜柑の甘さが、気分をほっこりとさせてくれるね」
「これも、社長の人徳のおかげかな」
と、僕。
・・・と、そこへ社長室から出て来るのは、御島社長(31)そのひとです。
「また、わたしの話?そういうのって、なんとなく、聞こえてくるのよねー」
と、御島さんは言いながら、僕の隣の席に座ると、
「ね。昨日の「真田丸」見た?いつも通り、ワクワクしちゃったわよねー」
と、いつも通り、笑顔で話しだす御島さんなのでした。
「最近、「真田丸」を見ていて思うのは、「これは三谷幸喜作の歴史をモチーフにした喜劇舞台・・・を映像化したものなんだ」って」
「そういう事を感じるのよね。だから、普通に笑いが散りばめられていて・・・三谷幸喜作品を大好きなわたしからすると」
「もう面白くってたまらないのよね・・・」
と、御島さん。ルンルンな感じである。
「わたし、大河ドラマの不満っていろいろあるんだけど、その中でも、一番の不満が」
「「だいたい筋が予想出来る」って言うモノだったの。信長が出てくれば、「いつ本能寺の変か?」とか」
「幕末の作品なら「坂本龍馬はそもそも出て来るのか?薩長同盟への関わり方はどう描かれるのだろう?」とか」
「まあ、朝ドラの内容を知りながら、朝ドラを見ているようで・・・内容がだいたい類推出来る・・・ハッキリ言って、そこがつまらない所なのよね」
と、御島さん。
「それは昨年・・・「あまちゃん」がBSで全話再放送されても、全く話題にもならなかった事でも、証明されていますね」
と、ユキちゃん。
「でしょう?優れた作品でも、内容を知っていたら、興味が湧かないのよ。大河ドラマはそういう弱みがあって」
「視聴率も上がらなかった。でも、それは歴史が主体だったからなの。見知ったドラマを再現していたから、そうなったのよ」
と、御島さん。
「「真田丸」はその点違うと?」
と、僕。
「「真田丸」は、まず、喜劇と言う立ち位置から始まるわ。しかも、視聴者を笑わせる目的がまず、設定されていて」
「出て来る素材やモチーフはある意味、二の次三の次なのよね。むしろ「大河ドラマの面白さってこういう所にあるんだぜ」って」
「そういう意識で描かれているから・・・その上で、三谷幸喜作品が勇躍するから、面白いのよ・・・」
と、御島さん。
「なるほど・・・この「真田丸」は、あくまで三谷幸喜さんの喜劇舞台作品・・・歴史は単なるモチーフに過ぎないんだ」
と、僕。
「まあ、わたしが真田物語をよく知らないと言う幸運もあるけどね。でも、ここまで三話見てきたけど、作りが丹念じゃない」
「例えば、一話、ニ話で、描かれていた・・・大名家でも野伏に襲われて命を落としそうになる事もあると言う話や」
「今回の・・・真田家も国衆のひとりで・・・実は家の大きさもあまり他と変わらず・・・実際、盟主でもなかった・・・」
「そこの説得からまずかからないと織田信長に会いにすら、行けなかった・・・と言う真実を描いていたのも」
「すごく新鮮だったわ」
と、御島さん。
「ああ。それは確かに新鮮でしたね。僕は真田昌幸が武田家の重臣だったから、国衆は、割りと部下的な感じなのかと」
「思っていましたから・・・」
と、僕。
「でしょう?その中でも代表して寺島進さんと西村雅彦さんが出てきたけど・・・もう、このキャスト唸るわよね」
と、御島さん。
「はい?それはどうして?」
と、僕。
「わたしは、三谷幸喜作品の喜劇の面白さって・・・現実にいそうなキャラをさらにデフォルメして」
「「そうそう、こういう面倒くさい人いるのよね!」って言うキャラに仕立て上げて、さらに面白い脚本で動かしている所って」
「思っているのね。今までは、その中心人物は「常識的で真面目だけど、気が小さくて腹芸の出来ないオトコ」洋ちゃんだったわ」
と、御島さん。
「洋ちゃん、面白いですよ。でも、このキャラは、大河ドラマの想定顧客No.1のサラリーマンの父親像を想定していますよね?」
と、僕。
「わたしもそう思うわ。中堅サラリーマンの悲喜劇を彼に演じさせて、視聴率をあげる作戦だもの。それはわかるの」
「だから、彼が困れば困るほど、サラリーマン達は可笑しがるわ。きみまろさんが、実年夫婦にウケがいいように、ね・・・」
「ま、ある意味、自虐的な笑いがそこにはあるけど・・・ある意味、王道だわ」
と、御島さん。
「そうか。洋ちゃんは、サラリーマンを描いたキャラだったんですね。でも、洋ちゃんは、10代、20代の女性にもすごい人気ですよ」
「わたし、こういうオトコはタイプじゃないけど、なんとなく笑ってしまうような・・・弟キャラかもしれないですね」
と、ユキちゃん。
「そうね。それも正しい見方なんじゃない?彼が困れば困るほど、「真田丸」は面白くなる。さらに言えば・・・」
「わたしが今回好きだったのは・・・その洋ちゃんの奥さん・・・一瞬しか出てこないけど、もう完全にベタな演技で、舞台の役者さんよね。あの女性」
と、御島さん。
「洋ちゃんの前で「信之さんは真田の跡取りの長男で・・・」って何度も繰り返して、二度目に「それわかったから」と一蹴されてた」
「病気がちな奥さんね。確かに喜劇はベタな程、面白いんだよね。もう、いかにも、「わたし、すぐ死にます」っていう」
「フラグ立ちしてたもんな・・・」
と、僕。
「大河ドラマは、そういうフラグ立ちを読み取って、楽しむのも・・・ひとつの大事な楽しみ方ですよね」
と、ユキちゃん。
「三谷幸喜さんは、そういう「大河ドラマのお約束」もちゃんと意識して書いているわ。あと、戦国大河ドラマのお約束は」
「毎回、戦シーンがある事ね。ま、チャンバラシーンがあるからこそ、主役のカッコいいシーンに女性も男性も、萌えられるって事じゃない」
と、御島さん。
「それ、いいですよね。主役がいかに使える人間かが、描かれて・・・信繁さんのカッコよさが際立っていた」
「そういう意味で言えば、洋ちゃんの方は・・・どんでん返しが面白かったですね」
「そう言えば、御島さんは寺島進さんのような男臭い男性が好きなんですよね?」
と、僕。
「もう、当たり前じゃなーい。寺島進さんに「よ、今日、飲みに行くか?」なんて誘われたら、絶対に飲みに行っちゃうもの」
「あの「アニキ」的な男臭ささ加減が、わたしは大好きだわ」
と、御島さん。
「彼はキャラ的には、どういう意味を持たせているんでしょう?主役達を助ける、怖いお兄さん的なキャラですか?」
と、僕。
「そうね。世の中の裏の裏をどこまでも知っている、主役達を助けてくれる、オトナのオトコ・・・真田昌幸お父さんの盟友と言ってもいいキャラよね」
「ま、サラリーマンの洋ちゃんとは、まあ、住んでる世界が違うと言う所かしら。でも、情には熱くて、ひとの気持ちのわかるオトコ」
「・・・っていうか、世の中で苦労をしてきたからこそ、ああいう地位に登れたからこそ、洋ちゃんの気持ちもわかる」
「・・・そういう苦労人の位置よね。だから、逆にこれから苦労する洋ちゃんには、寺島進さんの気持ちなんてわかるはずも無いのよ」
と、御島さん。
「そういう意味で言うと、寺島進さんは、信繁の方を買っている感じで描かれていましたね」
と、ユキちゃん。
「信繁の方が仕込みがいがあると感じてるって表現でしょうね。若い頃の自分を見ているって感じかしらね」
と、御島さん。
「まあ、でも、今回、そういう意味では、「こういう面倒くさいオヤジ・・・世の中にいるのよねー」のもうひとりは」
「やっぱり、役者バカ・・・藤岡弘、さんの本多忠勝さんよねー。もう、自分の正義は皆も理解してくれると勝手に解釈して」
「自分の価値観を押し付ける・・・で、いて他人の価値観は一切受け付けない・・・そういうオヤジを熱演していて」
「その個人のあり方と役のあり方がピッタリリンクしていて、笑えちゃうのよねー」
と、御島さん。
「「殿、それが武将の道ですぞ」みたいな事を言い出して、その価値をすぐに押し付けるから・・・家康に煙たがられている」
「・・・なんか、そういう、ある価値観に凝り固まった・・・融通が効かない、オヤジとかいるよねー」
「僕が一番苦手としているパターンだけど・・・この人、本多忠勝だから、洋ちゃんを気に入って、お嫁さんをくれる人なんだよね」
と、僕。
「多分、洋ちゃんの常識的な正義漢・・・と言う所が本多忠勝に気に入られる作劇になるんでしょうけど」
「この二人が義理の親子になるってだけでも笑っちゃうわよね。妙にウマが合う・・・洋ちゃんが、本当の父親とはウマが合わないから」
「余計、そこが強調されるように感じるわね・・・でも、それって、洋ちゃんの経験が超不足しているだけなんだけどね。人間小さいし・・・」
と、御島さん。
「逆に本多忠勝さんは、殺生の経験が深いから、自分なりの正義感が確立しちゃったパターンですか」
と、僕。
「そうね。いずれにしろ、こういう凝り固まった価値観に支配された人間は、使いづらいのよね」
「戦は超強いかもしれないけれど・・・先も読めないし・・・寺島進さんの方が、先は読めるのは確かだわ」
「真田昌幸さんの価値を理解出来るわけだから・・・」
と、御島さん。
「寺島進さんと言えば・・・コンビで出てきた西村雅彦さんの御島さんの評価はどうなんです?」
と、僕。
「え?この人、ケツの穴の小さい役がお似合いな、ゲゲゲの鬼太郎のネズミ男みたいな気の小さいオトコでしょう?」
「女性には当然、人気無いんじゃない?」
と、御島さん。バッサリ。
「ま、西村雅彦さんが実際どういう人間かは、別に良くて・・・そういう猜疑心の固まり役は、最適任よね」
「実際、長い間、田村正和さんの引き立て役をやっていたんだから・・・」
と、御島さん。
「で、だいたいこういうオトコって、殺されてしまう運命にあるんだけど・・・さすが三谷幸喜さんと古い仲間だけあって」
「いい場所に使うわよね・・・」
と、御島さん。
「今回、面白かったのは、やっぱり、寺島進さんと西村雅彦さんが真田昌幸さんを織田信長に売ろうとしたエピですよね」
「洋ちゃんも密書を上杉景勝に渡す命令をされて、勇躍その命令を果たすべくサスケと一緒に行動するんですけど」
「二人の謀反に遭い・・・って言う話でしたから・・・そこから、それが真田昌幸発案の謀略だった事が後でわかると」
「胸がすくって言うか・・・これこそ、歴史物語の深さと面白さだとわかりましたね」
と、ユキちゃん。
「そうなんだよね。あの寺島進さんが、「わたしは、真田昌幸に乗ったのだ」と言ったあたりの芝居はゾクゾクしたもんね」
「相変わらず、洋ちゃん・・・「は?こ、これはどういう事で?」みたいになっていましたけど」
「実際、視聴者のサラリーマン達も、洋ちゃんの意識で見ているから・・・「そ。そういう事なの!やるじゃん、真田昌幸!」」
「みたいになったでしょうね」
と、僕。
「うん。今回、そこに一番、すっごくゾクゾクしたし、面白かった。ほんと、三谷幸喜作品の良さが集められた作品になっているもの」
「もう、ホント、すぐに次が見たいって思っちゃうわ」
と、御島さん。
「次は織田信長さんや、明智光秀さんが出て来るはずですからね。安土城の天主閣の唯一の主、「天主」織田信長さんの」
「傍若無人ぶり・・・見られるんじゃないですか!」
と、ユキちゃん。
「おっと、その話の前に、男性陣としては、楽しみだった、長澤まさみちゃんが出てきましたけど」
「彼女もコメディエンヌにするつもりですね、三谷幸喜さんは」
と、僕。
「本来、正統なお姫様役くらいやっていてもよさそうな長澤まさみちゃん・・・だけど、実際は、真田昌幸の臣下の娘」
「・・・どうも真田信繁さんにすれば、気安い友人役だったわね。堺雅人さんが惚れている女性の為に・・・櫛でもあげたら」
「的なアドバイスもしている様子・・・そういう三枚目に使っちゃう所がいいのよね。でも、それくらいこなせそうで」
「長澤まさみちゃん・・・ちょっと、これから面白い感じよね」
と、御島さん。
「堺雅人さんに割りと冷たくされるんだけど・・・気があるのは、長澤まさみちゃんの方って、表現でしたからね」
「「あ、足やっちゃったみたい。先に行ってて」みたいなベタな芝居がまた、上手いんだよなー。ちょっとわざとらしいくらいベタ」
「やっぱ、ベタは、喜劇の基本だねー」
と、僕。
「いずれにしろ、今回は、真田昌幸家が置かれた状況を洋ちゃんを中心に紹介させて・・・全然一枚岩では無い信濃って感じで」
「描かれて・・・真田昌幸は悪い奴・・・みたいな感じで、西村雅彦さんがニセの手紙を織田信長に持っていく・・・」
「それを真田昌幸は、最初から見越していて・・・その状況をどう利用して、織田信長のこころを取るか」
「・・・そういう話になりそうですね」
と、僕。
「もうね。先が読めないでしょう?西村雅彦さんがそこで殺される事になるのか・・・西村雅彦さんを一回使いするのか」
「そこも見モノ。織田信長に会いにいく、真田昌幸さんと堺雅人さん・・・しかし、見た?堺雅人さん・・・」
「ただ、路傍の石に座っているだけで、少年感がはちきれんばかり・・・わたし最近わかったけど」
「男性は少年感が出せるうちは、女性に恋されるのよ。これが、おっさん感が出始めちゃったら、恋はされないわよね」
「・・・そういう意味じゃあ、寺島進さんは、アニキ感が出てたわよね。そ。少年感→アニキ感が正しい成長なのよ」
「・・・→おっさん感の男性は、もう恋とは関係ない感じよね」
と、御島さん。
「確かに、堺雅人さんの少年感は、僕も驚きました。あれ、高校生くらいの感じの芝居ですもんね」
「すごいもんだ・・・」
と、僕。
「やっぱり、日本文化・・・「餅は餅屋」って事なんでしょうね」
「「小劇場界の微笑みのプリンス」・・・堺雅人さんは、過去、そう呼ばれていたみたいですよ」
と、ユキちゃん。
「三谷幸喜さんも・・・演劇界の叩き上げな人だもの」
「そういう意味では、堺雅人さんと三谷幸喜さんは、運命的な出会いだったのかもしれないわ」
と、御島さん。
「その二人を始めとして、皆が全力で作っている、大河ドラマ「真田丸」。今、見なきゃ、絶対損するわ。これだけは誓ってもいいわ」
「歴史を知らない女性でも、笑える能力さえあれば、全力で楽しめる感じだもん。しあわせな気持ちになりたければ、見なきゃ、ね」
と、御島さん。
「御意。僕も同じ思いです」「わたしも」
と、僕ら二人は、御島さんの言葉に、素直に同意した。
(おしまい)