「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「由美ちゃん物語」(「江」のつまらなさの理由編)(5)

2011年05月26日 | ドラマについての小ネタ
「そういうことなのーーー?」

と、佳乃さんが、驚きの表情を見せながら、目を大きく、見開いて、立ち上がります。

「どうしました、佳乃さん!」

と、沢村くんが心配そうに、佳乃さんを見ます。

佳乃さんは、平静を取り戻して、僕達の方を見ます。

「ごめんなさい、取り乱したりして・・・」

と、佳乃さんは、頭を下げると、

「田渕久美子さんが、なぜ、こんなにも早く再登板になったか、合点が、いったので・・・」

と、静かに話します。

「そうですか。佳乃さんも、さすがに頭のキレがいいですね。まあ、田渕さんとある意味、同じ立場の方ですからね。では、ひとつ、その点について、お話しください」

と、沢村くんは、推理の続きを佳乃さんに渡します。

佳乃さんは、少しうつむきがちに、話しはじめます。

「田渕久美子さんの立場に立てば、さっき、ゆるちょくんが指摘したように、すべての実績が兄にあるように、周りがとらえている、という状況は、許せるものでは、なかったのよ」

と、佳乃さんは、ポツリといいます。

「だって、そうじゃない。彼女からすれば、自分に価値があると考えているのに、どうも、周り、つまりNHK社内が、兄の方に重きを置くような雰囲気を感じたら・・・」

と、佳乃さんは、綺麗な目を少しだけうるませながら話します。

「だから、絶対に、そういう評判は覆さなければいけなかった。彼女的には・・・」

と、佳乃さんは、強い目をしながら、言います。

「そうしなければ、せっかく「篤姫」で成功した意味がなくなってしまう。そうですよね、佳乃さん」

と、沢村くんが、ニヤリとしながら、話します。

「そう。そうよ・・・せっかく築きあげてきたものが、砂上の楼閣のように、崩れそうになっていたの・・・」

と、佳乃さんは、同じ女性として、独り立ちして、男性社会とも言われる、この日本でプロとしてやりぬく大変さに共感を抱いているようです。

「この日本という社会で、女性でいながら、認められるということは、大変なことなの。それに・・・」

と、強い共感を覚える佳乃さんは、話し続けます。

「一旦は賞賛を得られたんだもの・・・自分を、日本という男性社会が、認めてくれた瞬間が、あったんだもの・・・それを手元から、離したくはない。そう強く感じるはずだわ・・・」

と、佳乃さんは、まるで、自分のことのように話します。

「でも、離れてしまった。NHKの上層部は、すべてを知ったでしょうし、日本の男性社会はそのあたり、シビアですからね」

と、僕が言うと、佳乃さんは、複雑な表情で、コクリと頷きます。

「いいですかね?佳乃さん」

と、沢村くんが、笑顔で、聞いています。

その言葉に、またもや、コクリとうなずく、佳乃さんです。

「まあ、今、佳乃さんが言った通り、田渕久美子氏には、強い思いがあったんです。兄に負けるか、日本の男社会に負けるか!私の力を見せてやる!というね」

と、沢村くんは、さらりと、言います。

「まあ、NHK側だって、彼女に、恩義が、確かにある。それに弱みもあるわけです。そこを突いて、田渕久美子氏は、強く要請したに違いありません。自分を再度、大河の脚本家として、登板させろとね」

と、沢村くんは、言います。

「まあ、NHK側だって、「篤姫」の脚本家が、最登板ということにすれば、多くの女性が見てくれる可能性は、高い!と踏むわなー」

と、僕が言います。

「そう。それこそ、女性向け脚本という点では、実績があるわけだから、新しい人間を使うよりは、視聴率獲得の可能性は、高いです」

と、沢村くんが続けます。

「それに、「江」と「篤姫」を見ていて、明らかに違うところを、みなさん、感じませんか?大河ドラマのファンとして?」

と、沢村くんが質問します。

「えー、なにそれー!」

と、それほど、大河ドラマファンではない、まひるちゃんが、ブーイングです(笑)。

「うーん、なんだろう、出てくる男性・・・貶められている描かれ方をするひとが、多いってこと?」

と、これは、毎週大河ドラマをしっかり見ている由美ちゃんが答えます。

「うん。いい感じだね。でも、徳川家康や、明智光秀、千宗易なんかは、いい感じで、描かれているよ?」

と、沢村くんは、反論します。

「家庭的な話が、多いってこと?でも、「篤姫」も、篤姫周りの話が、多かったわね・・・」

と、佳乃さんも答えを出しますが、少し、おかしさを感じています。

「おしい!さすが佳乃さんだ・・・でも、ほぼ、正解に近いですよ。ゆるちょくん、どうだい?」

と、沢村くんは、僕に直接聞いてきます。

「「篤姫」では、歴史の大きな流れのポイントとなるような所につながる場所に必ず篤姫がいた・・・というか、篤姫を通して歴史を描く部分が多かった・・・というのかな」

と、僕も簡単には説明できません。

「うんうん。いいね、続けて」

と、沢村くんは、うれしそうにしています。

「例えば「篤姫」では、篤姫に、薩摩藩の調所笑左衛門と関わらせて、お由羅騒動の原因あたりをさらりと説明したり、歴史ありきで書いているんだよね」

と、僕は続けます。

「うんうん。それで」

と、沢村くんは、うれしそうです。

「決して「篤姫」の日常生活の物語ではなく、歴史を表現するための、「篤姫」物語だったのが、「篤姫」なんだよね」

と、僕は続けます。

沢村くんは、うなづいたままです。

「でも、「江」は違う。「江」は、浅井3姉妹の日常物語に過ぎない。セレブの日常物語。その外側で歴史が動いているに過ぎない。基本、歴史は、関係のない話って扱いだもの」

沢村くんは、ニコニコ僕を見ています。

「つまり、結論的に言えば、「篤姫」は、歴史物語であるのに対し、「江」は、歴史はメインでない、プリンセスラブストーリーに過ぎないんです」

と、僕が結論付けると、沢村くんは、

「うん。さすが、ゆるちょくん、それが、正解だ!」

と、弟分をさらりと褒めるのでした。

「つまり、それが、どういうことを意味しているか、わかるかな?みなさん」

と、沢村くんは、さらに、皆を見回しながら、質問を投げかけるのでした。

「そこが、一番、大事な鍵なんです!」

と、沢村くんは、ニヤリとするのでした。


階段教室には、戦慄が走っていました。

湘南の海岸の風は、強くなり始めていました。


(つづく)

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