YUKI

言語、言語で表現できることすべて

不思議な感覚 2

2008-08-13 06:17:05 | Weblog
「頭が痛い…」

ガラス越しとはいえ、夏の激しい陽射しを浴び
蛇のようにまがりくねる山道をドライブしたあと、
彼女はそう言って小さく吐息をはいた。

「母もそうだから、頭痛もち…大したことない」

目的地に着いているのだが、降りて散策するのもやめ
途中で、道の駅に立ち寄るのもやめ、
ひたすらに帰りを急ぐことにした。

「ぁあ、このひどい頭痛がなければな…」

…そんなにひどいのか?少し気が動転して、
「あなたの同僚は、みな結婚してるの?」という彼女の問いを
いまさらのように思い出してしまった。

「昔、一緒に仕事してたその女性は、25を過ぎて少し焦ってたようだ」
「20代の私は結婚なんて全く考えもせず、彼女の気持ちに気づかなかった…」
「私は転勤し、彼女は職をやめたよ。遠く離れても年賀状だけは交換してたんだが」
「今年に限り、彼女の夫の名で来たハガキには、彼女が亡くなったと記されてた」

「それ以来、折に触れて彼女のことを考えない日はないんだよ」
「彼女のために出来ることは、今はそれしかないんだね…」

彼女のアパートの戸口のまん前に車を引き入れて、止めた。

「お大事に。」

一歩降りて、目の前がすぐにアパートの戸口であることに気づいた彼女は
顔色が少しだけ持ち直して、嬉しそうにいった。

「明日も、この時間ね?」
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