大小迫 つむぎの家

よみがえれ!大小迫の里山。 人と人、人と自然をつなぎ、つむぐ「つむぎの家」

”北限のツバキ”で復興支援

2013年08月06日 | 震災と復興

”ヤブツバキが自生する北限の地”と言われているここ三陸は、昔から椿の実を製油し、食用や美容に活用していました。つむぎの家にもツバキ油を搾る古式の道具があり、昭和40年頃までは使用していましたが、時代の流れと共に使われなくなりました。

震災前までは、陸前高田に東北地方で唯一、ツバキ油を生産する製油所があり、細々と稼働していましたが震災で施設が流され、経営者の長男も犠牲になり、廃業に追い込まれました。その後、震災で仕事を失った障害者就労支援施設「青松館」が製油技術を引き継ぎました。

震災後に、被災地ボランティアに来ていた渡邊さんと佐藤さんが製油技術に注目し、椿油を使った化粧品の製品化を思い立ち、一般社団法人「リテラ」設立。そして北限のツバキ油を使ったハンドクリームやリップクリームを開発し、現在、被災地の資源を生かした復興の後押しをしています。

その若い二人が、実生で自然発芽し、人の背丈ほどに育ったヤブツバキの苗木を薄暗いヤブから掘り起し、移植する作業に取り組んでくれました。日当たりのよい環境に移すことで椿は実をつけます。

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代表の渡邊さんは、伸びすぎた椿の枝を下ろし、佐藤さんはスコップで椿の根元を掘り起こす作業にせいを出しています。


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ようやく掘り起こした苗木を手にした佐藤さん、比較的柔らかな土壌ですがツバキの根張りの強さに驚いていました。


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掘り起こした椿の苗木を山から下ろし、とりあえずビニールを掛けていないハウスの中に仮植えしました。

(椿の幼木は、シカも好んで食べるようで、囲いが必要です。)


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移植予定本数の半分ですが、ハウスの中に仮移植を終え、満足した笑顔を見せる渡邊さんと佐藤さん。

来春には、つむぎの家の山に植樹する予定です。


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夜は、裏の田んぼでヘイケボタルの鑑賞です。ホタルの最盛期は過ぎましたが、低温が続いたためか数は減少したものの、いまだにホタルが飛び交い、二人もほっとした表情で幻想的な光を楽しんでいました。

リテラの事務所は青山ですが、佐藤さんは陸前高田に居を構え、地域住民と交流しながら被災地の復興に取り組んでいます。移植作業の途中で、母屋にあった茶菓子を食べながら3人で一休みしました。手にしたせんべいが長雨でシケていたので「あら、このせんべいシケてる!」と言うと「私、シケセンが好きなの」とセンベイを口にする渡邊さん、もう一つの菓子器に入っていた飴は、暑さで融けかかっていました。「この飴も、融けかかっているかもね」と言うと「僕、融けた飴が好きなんです」と、佐藤さんが塩飴を頬張りました。私があっけにとられていると「二人とも落ちこぼれが好きなのかもね!」と佐藤さん。お二人の人間性がにじみ出る会話に心洗われました。

震災後、2年5か月が経ちました。まだ、復興への道のりは途上ですが、若い二人が被災地の資源や技術を生かして起業し、地域に密着して復興支援に取り組んでいる姿に、明るい未来を感じました。