ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

みんな違ってみんな正しい

2018-07-21 08:21:56 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「専門家間の違い」7月11日
 『論点』欄のテーマは、『万引き 解決への道は』でした。是枝監督の『万引き家族』に触発されたテーマ設定のようでした。3人の専門家が論じているのですが、それぞれの現状認識、問題意識が全く異なっている(編集部がそういう方を選んだのでしょうが)ことが、とても興味深いです。
 立教大教授小長井賀與氏は、保護観察官の経験もある元法務官僚です。小長井氏は、『弱者を支える営みを広げれば、万引きなどの犯罪が減る』と述べ、『幼少期は親の愛情不足を物で埋める』『中高生は学校での不満の憂さ晴らしや肝試し』という背景分析をなさっています。
 一方、全国万引犯罪防止機構理事長竹花豊氏の現状認識は違います。『外国人による集団窃盗が横行し、中でも、高額の渡航資金の返済に苦しむ留学生の存在が目立つ。インターネットオークションの発達で転売しやすくなったことも万引きを助長している』と述べ、犯罪としての高度化に懸念を示していらっしゃいます。その当然の帰結として、『進化した顔認証機能』の活用や警察との連携という対策を提示なさっています。
 さらに、精神保健指定医竹村道夫氏は、『逮捕された人のうち4~24%に窃盗症がみられる』という事実を示し、『治療で回復が見込める人には、可能な範囲で医学的な支援をすべき』と提案なさっています。
 それぞれが、万引きという事象のある面をみているという意味で、正しい認識なのでしょうが、認識の違いは対処法の違いに結びつき、それが総合的な対策を打ち出す際の難しさに結びついているという印象です。こうした食い違いは、学校における諸問題に対する対処法の模索でもみられるものです。
 「問題教員」と呼ばれる人たちへの対処法についていえば、精神疾患の多さに着目する人、指導力不足に着目する人、政治活動等偏向教育を行う教員や団体に着目する人など、様々おり、それぞれが自分の問題意識と異なる問題についても認識しながらも、対策の優先順位で対立してしまうのです。
 子供の問題行動についていえば、問題を起こす子供も虐待等の被害者であるという見方をする人と、暴走族や半グレとのつながりから凶悪化を指摘し刑罰の強化を重視する人がいます。さらに、スマホの過剰使用による脳の変化などの知見から対策を訴える人もいる状態です。
 いじめ問題についても、子供の規範意識や道徳性の低下に原因を求める人は道徳教育の教科化などの対策を支持しますし、自殺など重大事態を引き起こすように内容の深刻化に着目し、いじめは犯罪という立場をとる人は登校停止や強制転校などの措置、対策を怠った教員への罰則導入など外的圧力を強める対策を主張します。また、いじめ加害者も苦しんでいるとしてその心のケアを重視する人たちもいます。
 どの例の、どの立場も間違ってはいません。でも、全体像を捉えてもいません。時代の移り変わりによって多数派が変わっていくという側面もあります。全体像を俯瞰すると共に、時間の経過による質的な変化にも気を配り、かつて自分が経験したときには~だった、という思い込みから脱却することも必要です。自戒を込めて。

 

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