「何が大変?」10月4日
『教員給与の引き上げ 負担減らす対策もさらに』と題された社説が掲載されました。そこでは、『小中学校の教員の半数以上が仕事に「満足している」と答えている』『小学校で64.5%、中学校では77.1%の教員が、国の指針で定めた上限の月45時間を超えて残業していた』『ワークライフ・バランスについては小中ともに約半数が「満足していない」と回答した』などの実情が紹介され、『状況を根本的に改善するには、教員1人あたりの負担を減らすことが重要だ』と書かれていました。
その通りです。ここまでは全く正しい認識です。しかし問題はその先です。負担軽減を言うのであれば、教員にとって何が負担なのか、詳細に調査する必要があるはずです。それにもかかわらず、そうした調査は行われておらず、行う予定もないまま、文科省の『継続的に増員する』という方針への評価と、『非効率な業務も減らさなければならない(略)デジタル化の加速は急務だ』とアナログからデジタルへの転換に触れているだけなのです。
我が国の学校の基本システムは、一人の教員による多人数指導です。それは、明治の学制以降、150年変わりません。指導する内容は変わりました。修身がなくなり、生活科が創設され、総合的な学習の時間が設けられ、道徳が教科化し、小学校で英語が教科になりました。子供の数も変わりました。一学級の人数もかつての50人から45人に、40人にと減り続けています。でも、一人の教員による多人数指導という基本形態は変わっていません(TTも主たる一人と従の一人)。
私も45人の学級を担任したこともあれば、25人の学級を担任したこともあります。いずれも6年生でした。通知表を作成する、家庭訪問や個人面談をするなどについては、確かに受け持つ子供が少ない方が楽でしたが、正直大きな違いは感じませんでした。大変だと感じたのは、1人対多人数という枠組みから外れた対応が必要なときでした。障害があり、マンツーマンの指導が必要な子供、日本語が理解できない子供、育児放棄され問題行動が頻発する子供、いずれも、1人の子供のための対応で残りの29人から目を離さなければならない状況が生まれます。そして、目を離していた間のことについて、後刻把握し、問題があれば対処し、その間のノートやプリントを点検評価しなければなりません。
また、1人のために、保護者と、病院や児相や警察などの関係機関と、カウンセラーや日本語指導員など他の職種の人と、校長・副校長や生活指導主幹など校内の教員と、連携し協力する時間を生み出さなければなりません。連携と協力のためには、現状把握が必要であり、そのためには「報告書」などの作成が必要になり、さらにそのためには正確な記録を日々作成する必要があるのです。
こうした枠外の仕事、イレギュラーな仕事が頻繁に求められる状況のとき、負担感が増すのです。そこを手当てする対策が必要なのです。単に人を増やし、学校の全教職員の労働量を職員数で割って、○○時間減りましたというような雑な対策では効果が少ないのです。文科省は、現場の教員の声を丁寧に拾い集め、大変さの実態を把握すべきです。
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