「政治家の親切」4月20日
『市議、学校に不適切発言』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、いじめに遭ったと訴える女子生徒の保護者から、『学校の対応が不十分。警察に相談した方がいいか』と相談を受けた市議が、学校側に対して、『「今、いじめや自殺は大きな問題になっている。学校が困らないか心配している」「困るんだったら止めることもできる」と伝えていた』ということです。
保護者側に立って相談に応じていたはずなのに、学校には学校の味方のように接していた、ということが、不適切とされたということです。保護者からみれば、市長や市教委といった学校の「上部機関」に圧力をかけることができる立場にある市議の影響力に期待したということなのでしょう。民間のいじめ対応を看板にしている施設の中には、政治家やマスコミの力をうまく活用することを勧めるところもありますから、市議や区議を使って早期の解決、それも自分の主張が通るような解決を図る保護者は少なくありません。
一方、市議や区議にとっては、有権者に恩を売ることは選挙での得票に直接結びつきますし、「あの先生は力がある」という評判を立ててもらえば、大きな波及効果が期待できます。何かあれば口を突っ込もうという姿勢の議員も少なくありません。
もっとも、有権者からの依頼を受けた後の対応は議員によって異なります。議員が市政与党なのか野党なのか、議員と校長の関係性、持ち込まれた事案の性質などを勘案し、形式的な問い合わせに止まるケースもあれば、市長や教育長に直接圧力をかけてくるケースもあります。また、校長の話を聞かずに一方的に責めてくる議員もいれば、「実際はどうなの?」と有権者の言うことを鵜呑みにはせずに真偽を自分で確かめようとする人もいます。
記事によればこの議員は『女子生徒の思い込みが強い案件』と判断していたようで、それが、学校側に立ったかのように疑われる言動となったのでしょう。良心的な人だと思います。少なくとも、私が指導室長時代に経験した同様な案件からすれば、高圧的な決めつけがないだけ公平な対応です。また、校長が「警察には行かないように」と隠ぺいするような発言をしなかったことも適切な対応でした。警察でも、マスコミでも、保護者には訴える権利があるという認識をもち、保護者がどういう行動を取ろうが、学校としては誠実に調査を進め、判明した事実を速やかに教委と保護者に報告するという態度を貫くことが基本なのですから。
まともな政治家ならば、学校にしろ保護者にしろ一方的に片方に有利な結論を出すように圧力をかけるようなことはしないはずです。自分に有利な圧力を期待して政治家を利用するのは望ましくありません。それはかえって問題をこじらせるからです。政治家の親切とはそういったものなのです。
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