ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

恵さんに学ぶ

2012-09-27 07:28:56 | Weblog
「授業の達人」9月21日
 タレントの恵俊彰氏がインタビューに答えていました。恵氏は、某番組のパーソナリティーとして2000組のゲストと出会ったそうです。インタビュー記事の中で恵氏は、『人と会って、しゃべることが好きなんですよ。大いなる疑問をもって、それを楽しみ、話を面白がる。僕の役目は、ゲストに興味をもってもらうことなんです』『テレビでも2時間は打ち合わせをします。台本を作るというより、いろんなことの「確認」。本番では台本を離れます。ちゃんと練習しておかないと、本番が面白くないんです』と語っています。『徹底して稽古し本番で脱線する』スタイルなのだそうです。
 恵氏の言葉の中に、2つの授業のコツが潜んでいます。まず、「相手の話を楽しみ、面白がる」ということです。授業の場合、子供の発言を楽しみ、面白がるということになります。「どんなことを言うのだろう」「どうしてこんなことを言うのだろう」「なぜ、この子だけ違うことを言うのだろう」「へぇー、そんな考え方もあるのか」と、子供の話す内容に興味をもち、感心するという感性こそ、良き授業者の条件なのです。子供の発想に学び、「今日は面白い見方を知って得したな」と思えることが大切なのです。
 授業が下手と言われる教員は、この逆です。「どうせ大したことは言わないだろう」「何でこんな間違ったことを言うのか」「くだらないことを言って時間をとるな」というような態度です。初めから、子供を無知で未熟な存在で、博識な大人である自分よりも数段劣ると見なしているのですから、子供の側もそれを敏感に感じ、「何言ったってしょうがない」と、教員とやりとりしようという意欲などもてなくなっているのです。
 もう一つは、「徹底して稽古し本番で脱線する」という姿勢です。授業の前に、学習指導案を作成し、発問計画や板書計画を練り上げ、学習活動ごとの所要時間を想定しておくという緻密さをもちながらも、実際の授業では、子供の発言や反応に応じて、融通無碍に変化させていくということになります。子供を生かすためにきっちりとした計画は立てないという教員がいますが、それは間違いなのです。こうした主張をする教員の多くは、単なる怠け者であると考えて間違いありません。また、自分の計画に固執する教員もいます。計画を立てるだけましですが、計画に固執するのは、自分の計画に自信があるというのではなく、臨機応変に対応する自信がないということである場合がほとんどです。
 逆説のようですが、徹底的に準備するからこそ、柔軟に修正できるということなのです。私は指導力不足教員の研修を担当してきましたが、彼らは一人の例外もなく、本心の部分で子供を見下し、自分の計画に固執していました。実は、私自身、若い頃はそうした傾向がある教員だったのです。だからこそ、恵氏の言うことの重みが分かるのです。
 相手が芸能人や著名人であろうが、小中学生であろうが、人と接し、その人の良さを引き出すという意味では、教員もパーソナリティーも同じなのだと思います。

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