(今見ると緊張のあまり、呆けたような顔つきでした。ジャンパーの襟さえ変になっています)
「農の神様に会う」(その3終わり)
リンゴ畑に到着し、奥様から紹介して頂いた。
突然の来訪で仕事の邪魔をする事を詫びた。
しかし、星氏はいやな顔もせず手を休められ話し相手を務めてくださった。
井上ひさし氏の巻頭言どおりであり、著作に滲み出る人格そのものの方であった。
二、三十分の会話が大変長くそして充実して感じられた。
去り難かったが、私もいっぱしの百姓。
農繁期の忙しさは知っており、何時までも仕事の邪魔をする訳にはいかない。
再び失礼を詫びつつお別れをした。
そして、その際の写真を入れた礼状を出そうとして、
初めて名前を名乗らなかった事に気が付いた。改めて赤面するような思いをした。
晩秋、私は自分で作ったサツマイモを、何種類も詰めた荷物を作り、お礼に御送りした。
今年一月の上旬のこと、帰宅すると妻が興奮して「山形からリンゴが届いている。」という。
早速開けると、甘い香りが充満する。
そして購買者に宛てた手紙のコピーが同封されていた。
手紙によると異常気象のため、収穫が例年の三分の一になり、
購買希望者の購入希望にこたえられない旨が記されていた。
そんな貴重なリンゴを送って下さったのだ。
その有機栽培法によって作られたリンゴは、今まで食べたことの無い、
一口で表現のしようも無い味だった。
強いて言うなら、暖かくて深い人柄がしのばれる滋味あふれる味であった。
私たちに神様から届いたような贈り物だったのである。
(終わり)