9月上旬、4月に訪問した西バリ国立公園(TNBB)を、スマトラのNGOスタッフ、ブキッ・ティガプル国立公園(TNBT)のスタッフと共に再訪しました。
(4月のブログはこちら)
↑ブキッ・ティガプル国立公園(TNBT)のスタッフのアンディさん
今回は、TNBBのスタッフと意見交換すること、住民グループと交流することが主な目的でした。スマトラ(リアウ州)から参加したのは、ゆいツールの活動のパートナーであるSERAI(スライ)のリキさん(Pak Riki)、TNBTのスタッフ アンディさん(Pak Andi)、そしてTNBTの森でスマトラトラを守る活動をしているPKHS(ペーカーハーエス)のマネージャー ラフマッドさん(Pak Rahmad)。
TNBBスタッフとの意見交換は、朝9:45から始まり、ノンストップで2時間半続きました。
アルナヤさん(Pak IB.Arnaya)、スランガラさん(Pak Suranggara)、スギアルトさん(Pak Sugiarto)、ユディさん(Pak Wahyudi)の4名が対応してくれました。
ユディさん以外とは、昨年の10月に横浜であった一般社団法人あいあいネットのセミナーで会っていました。スランガラさんとスギアルトさんには、4月の訪問時もお世話になりました。
今回は、リアウから連れて行った仲間たちに、彼らと会ってもらい、活動のヒントをもらうことが目的でした。
なによりインドネシア人同士で直接意見交換をして、情報を吸収して欲しいと思っていました。
TNBBでは、国立公園ができてから地域住民と長く対立した歴史を持っていますが、2008年からあいあいネットの研修を受けたことで、スタッフの考え方が変わり、地域住民との関係も変わっていったこと、そしてスンブルクランポック村(Desa sumberklampok)の場合、住民の中に外から移り住んできて村興しに熱心に取り組む人(イスムさん:Pak Ismu)がいたおかげで、今の村の活動がある、ということを聞きました。
TNBTの場合、国立公園管理事務所は国立公園からはるか離れたところにあり(国立公園の際の村まで車で2時間程度。国立公園内の村へはスピードボートで3~5時間)、TNBBのように気軽にスタッフが訪問する、ということがそもそも難しいのですが、それでも住民との間に信頼関係を築くことの大切さを学びました。
PKHSのラフマッドさんは、森を守るために国立公園スタッフに代わって違法者(違法伐採をしている住民等)を捕まえることがありますが、守れ守れと言うだけでは問題が解決しないこと、住民に寄り添って生活向上を目指す取り組みが必要なことを実感したようでした。
TNBTのアンディさんは、今後TNBT周辺の村で住民主体でムライ・バトゥ(鳥)を繁殖させる取り組みをゆいツールと共に始めるために、スンブルクランポック村の活動を参考にしていくでしょう。アンディさんは同時に、あいあいネットの研修にも興味を持っていました。
スタディツアーに参加したメンバーとはこのあとスマトラで、ツアーで得たインスピレーションを共有し、今後の活動について意見交換を行いました。
一番の学びは、「支援したあと、住民をほったらかさない。住民が自立できるまで寄り添うこと」「住民が望んでいることはなんなのか。そこを聞き出して、限られた予算でどんな支援ができるか一緒に検討すること。」「住民自身が決めること。支援を待っている姿勢を変えること」などでした。
ゆいツールとしては、2年半前にスマトラで活動を始めたときからその視点でプログラムを練ってきましたが、今ここにきて、現地のNGOやTNBTのスタッフが本当にそのことが大切なことだ、と学べたことが、第一歩かもしれないと思いました。
自分で気づくこと。
この活動全体が、ESD(持続可能な開発のための教育)なんだ、ということを今回NGOスタッフに伝えることができました。
私たちは、住民相手にESDをやっているだけではなくて、本当は私たち自身もESDの中で学んでいるんだ、ということ。
それでも、まだPKHSのラフマッドさんは、「ゆいツールの目的はなんなの?アウトプットはなに?」と聞いてきます。
彼らの場合は、森でカメラトラップをしかけて、何頭スマトラトラが撮影できたか?ということがたとえば目に見えるアウトプットですが、ゆいツールの場合「住民が自発的に考え、未来を選び取ること」を目指していても、それがどんな形でアウトプットされるかは私にもまだわかりません。
ましてや少ない予算で、短い時間で、本当にそれが達成されるかわからないし、むしろ今歩き出したところなのかもしれません。
大きなお金を持ってきて、住民を組織して、なにか施設を建設して、一気に住民の生活が向上したらいいのかもしれません。
でも、やっぱり根底になければいけないのは、「住民自身が決める」という姿勢だと思います。
支援や援助に慣れている住民たちは、「次はなにをくれるの?」という待ちの姿勢が一般的です。
そこを変えていかなければ、森も守れないと、私は考えています。(山)
↓西バリ国立公園付近の観光地「バリタワー」にて。スタディツアーのメンバー、TNBBスタッフとともに。
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