4月にゆいツールはバリ島とスマトラ島で、国立公園周辺の住民による取り組み事例を調査してきました。
今回は、西バリ国立公園について書きます。(写真は、バリ島の固有種カンムリシロムク:Jalak Baliという鳥)
●西バリ国立公園(TNBB)
バリ島の西の端、ジャワ島がすぐそこに見える地域に位置しています。
今回は、この国立公園に隣接するスンブル・クランポック村を訪れました。
ヒンドゥー教徒(バリ民族)とイスラム教徒(ジャワ系住民)の両方が暮らしていて、近年、絶滅が危惧されているバリ島の固有種カンムリシロムクを繁殖させる住民グループが発足し、村ツーリズムも盛り上がってきました。
私ははじめ、絶滅しそうな鳥を繁殖させている、と聞いて、目的は放鳥だろうと思いこんだのですが、実はそれだけではありませんでした。
考えてみれば、住民が見返りも求めずに鳥を繁殖させるわけはありません。
住民の目的は、繁殖させること。繁殖させる目的で鳥を購入したい人に、売ること。
そして将来的には放鳥もして、昔のようにカンムリシロムクが飛び交う村にすることを目指しているそうです。
カンムリシロムクを繁殖させるためには、国立公園から許可を得なければいけません。血統図も作られ、きちんと管理されているそうです。
住民は、それはそれは大切にカンムリシロムクを繁殖させていました。
多くの住民が、カンムリシロムクの鳥小屋を家の中に組み込んで作っていました。
昔、日本の田舎で馬が家の土間の一角にいたようなイメージです。
エサは、コウロギ数匹とバナナ(さすがインドネシア!)、イカの背骨など。
繁殖中のつがいは敏感になるので、壁の穴のようなところから覗き込みました。
案内役のイスムさんが、この村ではごみ銀行(Bank Sampah)ではなくて、肥料銀行(Bank Pupuk)ってやつをやってるんだ、と言ったときには驚きました。村には、牛やヤギがたくさん飼われていて、それらの糞は今まではほったらかしだったのですが、肥料を作ろう!とイスムさんが思いつき、村の若者に声をかけてグループ(Embik Makmur)を結成したそうです。
作った肥料を売った売り上げを、1年後にメンバーに還元する仕組みのようです。
(村では、牛の糞を使ったバイオガスの利用もモデル的に行っていました。)
肥料の切り返しをしているところを見学させてもらいました。
TNBBの職員は、村人に村にあるものの価値に気づいてもらい、村の活動を熱心にすることで、国立公園の木を切ったり、生きものを捕って売ったりしないようにすることが大事だ、と言っていました。
村の中にある資源を活用すること。何が活用できるのか探し出すこと。
実は、TNBBの職員がコミュニティの人たちに寄り添い、ともに歩んでいけるファシリテーターとなるために、日本の一般社団法人あいあいネット(http://www.i-i-net.org/)が、研修や助言を行っています。
時間をかけて、国立公園スタッフや住民を育成すること。それがなによりも大事なことだ、とゆいツールは考えます。
TNBB周辺の村の住民が活動している理由は、一番はもちろん経済のためです。
でも本当の目的は、国立公園の自然を守ること。自然を守りながら、経済的に豊かになるために、カンムリシロムクの繁殖を行ったり、村ツーリズムに力を入れている、というわけです。
さて、ゆいツールが活動するスマトラ島の国立公園で、参考にすることができるでしょうか。一番の違いは、民族の気質です。
働き者で熱心なジャワ系の住民と違い、スマトラ島の先住民/地域住民は、楽してお金を稼ごうとする傾向があります。
今年、もう一度、スマトラのNGO仲間や国立公園レンジャーとともに、TNBBを訪れて、再度調査を行おうと考えています。
(山)
国立公園の端、ランプ・メラという場所からジャワ島を望む。
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