本日開花なり

季節のうつろいの中で、日々健気に育っている大好きな植物たちの様子を綴っています

ハナミズキの咲く頃

2009-05-04 | 庭日記
我が家のハナミズキの花が、今年も咲いています。

でも、あの家のハナミズキは咲いていません。
そして、あの家の前を通ることも、めっきり減りました。

12年前ここに引っ越してきて、たまたま通りがかったお宅の庭の草花のあしらいが目に止まり、それからはそちら方面に出かける時は、大通りに出ず、狭い道が入り組んだそのお宅の前を通るようになっていました。
もちろん車ですから、植物たちの様子が目に入ってくるのは、ほんの一瞬、1、2秒の事です。
作り込んでいない、自然な雰囲気の宿根草の様子が、その当時の私の目にとても新鮮に映ったのでした。

春先のスイセン、夏のアガパンサス、秋の小菊…
毎年季節が巡ると同じ花が見られて、それらがとても待ち遠しくもあり、印象的でした。
でも何より愉しみだったのが、年々生長していくハナミズキだったのです。
手塩に掛けていることはその樹形からも想像がつきました。
見事な枝振りに見事な花付き、数年前からは冬に立派な雪囲いが施されるようになっていました。
ご夫婦揃っての姿が見受けられ、旦那様が花にカメラを向けていらっしゃた事もありました。

私がハナミズキを庭に取り入れたのは、以前から街路樹のハナミズキに憧れていた事もありますが、あの家のハナミズキの影響が大きかったことは間違い有りません。

が、去年のことです。
そのハナミズキの半分、すっかり葉が落ちている事にふと気付きました。
「虫でも付いたのかしら…」
それから間もなくのことです。
『売家』の看板に気付いたのは…

そして、やがてその看板も外され、予想通り、庭はコンクリートで埋め尽くされ、駐車場になってしまいました。
植物にあまり興味のない人だったら、あの庭を管理するのはきっと大変でしょう。
駐車場は、必要不可欠だったのでしょう。

家主と共に去った庭…
息づく庭の植物たちは、庭主を失うと、命を持たないモノと同じになってしまうのだろうか…
そんなことが頭の中をグルグル巡って、結局結論も出ず、心の中が空になる。

ハナミズキの咲く頃、これからは毎年私の脳裏に焼き付いた、あの家のハナミズキがよみがえることでしょう。

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