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わずか4ミリ程度の幅のロボットの指先がなめらかに動き、0.6ミリの血管を縫い合わせた → ソニーグループが公開した手術支援ロボットの試作機

2024-07-03 10:06:59 | 政治経済問題
ソニー 4ミリの指先 “手術ロボ”開発 NHK 2024年7月2日 17時16分

わずか4ミリ程度の幅のロボットの指先がなめらかに動き、0.6ミリの血管を縫い合わせた。

2024年5月、米国電気電子学会(IEEE)が横浜市で開催した国際会議でソニーグループが公開した手術支援ロボットの試作機だ。

いまや映画やゲーム、音楽といったエンターテインメント事業のイメージが強いこの会社が人知れず開発を続けてきたロボットを取材した。

(経済部記者 西潟茜子)

ロボットが実現する“名医”の指先
ペンのような形をしたコントローラーを両手で持ち動かすと、ロボットの指先が精密にその動きを再現している。

ソニーグループが開発したこの手術支援ロボット。

実際は、人の動きをさらに最大10分の1に縮小してロボットは動いているという。

手術中の器具の交換もロボットが自動で行う。

こうしたロボットの動きは、とにかく“コンパクト”で“なめらか”だという印象を受ける。

この手術支援ロボットは、医療用語で「マイクロサージャリー」と呼ばれる顕微鏡を用いながら微細な血管や神経などを扱う手術向けに開発された。
高度な技術が求められる外科手術をロボットが支援する。

2024年2月には愛知医科大学が試作機による実験を行い、マイクロサージャリーを専門としない医師などによる直径約0.6ミリの動物の血管を縫い合わせることに成功したという。
開発現場はかつての“あの場所”にあった
ソニーという会社は、世代によって抱くイメージが異なるだろう。

1946年5月に東京通信工業として創業。
創業当時の東京通信工業
会社の前身である研究所で、当時、ラジオの短波放送を聴くためのコンバーター(=周波数変換器)を開発したことから始まる。

その後、ブラウン管カラーテレビのトリニトロン、ウォークマン、プレイステーションなどその時代を象徴する製品を生み出してきた。
ウォークマン
現在は、映画やゲーム、音楽とエンターテインメント事業が成長しているイメージが強い。

手術支援ロボットの開発現場があるという東京・品川区のビルを訪れた。
ソニー 大崎にあるオフィス
この場所は、1964年に映像技術の拠点「本社第三工場」として設立された跡地にある。

かつてこの地でトリニトロン方式のブラウン管テレビが開発された。
受付に向かう階段の踊り場には、当時の従業員と工場の様子の写真があった。

当時のカラーテレビも展示され、歴史を感じる場所だ。

研究室のあるフロアに上がると、そこには大学の研究施設のような空間が広がっていた。
セキュリティが厳重に管理されたゲートを通り抜けた先にある部屋で手術支援ロボットの開発が行われていた。

ロボットの開発は、さまざまな技術の蓄積によって実現していた。

操作を行うための卓上型コンソール(コントローラー)とロボットアームは、使いやすさを追求し、さまざまな施設や手術の現場で活用できるように可能なかぎりコンパクトにすることを目指したという。
コンパクト化といえば、ウォークマンに代表される“お家芸”だ。

なめらかで繊細なロボットの指先の動きは、位置と力の制御を協調させながら精密に機械を動かす「精密バイラテラル」と呼ばれるシステムのノウハウが継承されている。

このロボットには、aiboが開発された時代から蓄積された技術が詰まっている。
手元を拡大して表示する拡大鏡は、立体撮影が可能な高性能カメラと高精細の有機ELマイクロディスプレーを組み合わせて実現している。

その源流はテレビやカメラなど映像技術の歴史にある。
見上慧 技術士
「医師が実際に手を動かすときのその細かい作業を再現するために、まずは手先の微細な動きをセンシングして、ロボットの細い鉗子(かんし)を作りました。手首の動きをなめらかにできるように、モーションでスケーリングしてロボットの指先に伝え、器用な動きができるようになりました」
医療現場の深刻化する課題を支援したい
日本は今、深刻な医療課題を抱えている。

将来的な医師不足が指摘された2008年度から、地域枠を設けるなど、医学部定員の増員をしてきたことで、国内の医師の総数は増加している。

しかし、それでもなお慢性的な医師不足に悩まされる地域がある。

これは適切に医師を配備することができていない、いわゆる「医師の偏在化」が起きていることが要因にある。

特に深刻なのは外科医の減少だ。
厚生労働省のデータでは、医師の総数が増加しているにもかかわらず、じわじわと減少を続けているのだ。

減少しているうえ、50歳以上の外科医の割合が増えつづける高齢化も進んでいる。

過酷な現場、重労働というイメージで、外科医を志す若手の医師が減少しているのが要因だとされている。

さらに、ことし4月から始まった「医師の働き方改革」もこの医療現場の人手不足に拍車をかけることで、患者が必要なタイミングで必要な手術を受けられなくなる可能性も指摘されている。

手術支援ロボットは、熟練した医師や専門の医師でなくても、技術を必要とする高度な手術を行うことができる可能性を生む。

外科手術の間口を広げる期待が掛かっているという。
国産ロボットへの期待も
手術支援ロボットといえば、すぐに思い浮かぶのがアメリカ製のロボット、「da Vinci Surgical System」(=通称ダビンチ)だろう。
2000年にアメリカのFDA(食品医薬品局)が承認し、世界市場をほぼ独占してきた。

その主要特許が2019年に切れたことで、今は各国のメーカーが相次いで新規参入する動きが広がっている。

日本国内の医師たちの間では、海外製のロボットであるがゆえに、修理や改良を必要とするときにメーカーまで要望が届きにくいという声もあがっていた。
取材のなかで、ソニーの開発担当の技術者は、人とロボットを隔てない「人に寄り添い共存する」というコンセプトを大事にしたと語った。
見上慧 技術士
「われわれはずっと人の器用さを拡張するというロボットを研究して参りまして、その1つの成果になる。現場で働く医師の皆さんの意見もいただきながら研究開発を進めていきたいと思っています」
取材を終えて
かつて世界を席けんした日本の電機メーカーの衰退を叫ぶ声を聞くのは、もうしばらく前からのことだ。

ソニーという会社は、エレクトロニクスに代表されるものづくりからの“脱却”に成功した会社に映っていた。

しかし、今回の取材を通じて、この会社の源流となる技術の蓄積が確かにあり、今も大切にしている現場があることを知った。

現場で命と向き合う医師や外科医を志す医師たちにとって一筋の光となるのではないか。

そんな希望を感じた。

(6月10日「おはBiz」で放送)
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