突然告げられた「職場閉鎖」方針を撤回させた デイサービス職員たち、労組つくり交渉「1人では立場弱くても」 東京新聞 2024年9月6日 06時00分
高齢者を対象にした介護施設「こひつじデイサービスわが家」(東京都葛飾区)で働く施設長ら職員9人が、経営側の社会福祉法人が示した閉所方針を撤回させた。即座に結成した労働組合で団体交渉を行ったことが功を奏した。施設長の石川美帆さん(46)は「1人では立場の弱い労働者が組合をつくって職場や雇用を守る先例になれば」と話す。(畑間香織)
◆「赤字なので閉所」口止めまでされて
「時期未定だが3年連続赤字を理由にデイサービスを閉所する」。石川さんによると、6月3日に施設を運営する社会福祉法人葛飾福祉館(同)の大高幹理事長と理事1人から施設の閉所方針を突然告げられた上、他の職員に伝えないよう口止めをされた。石川さんは赤字の改善策を相談する機会や、経営会議の開催を求めたが、法人側は応じなかったという。
「あまりに一方的でひどい。利用者や現場を無視している」。そう感じた石川さんは、何かできることがないかと考えるため労働基準監督署や、区の法律相談を頼った。副施設長の福原忠彦さん(46)の紹介で1人から加入できる地域合同労組「全国一般東京東部労働組合」(同)にも相談。閉所が経営側の一存だけで決めることができず労働者や利用者に相談する内容だとして、労働組合を通じて法人側と交渉できる可能性があると知った。
◆「施設を守ってくれた」利用者側から感謝
法人は保育園や学童保育クラブなど10施設以上を運営し、このうち「わが家」の利用者は定員24人。職員は常勤4人と非常勤12人の計16人が法人と雇用契約を結んで働く。石川さんは「閉所は職員の雇用問題だけでなく、利用者やその家族の暮らしを支える地域の社会資源をなくす」と考え、計9人で6月26日に東京東部労働組合の支部として労組を結成。閉所方針の撤回や赤字を放置し続けた責任を取ることなど9項目の要求書を法人側に出した。
7月の第1回団交で労組と法人が交わした確認書には「法人は、理事長と一部理事が決めた廃止方針を撤回し継続する」と明記。労組は利用者やその家族らに閉所方針撤回の結果をお知らせで報告した。「組合をつくってデイサービスを守ってくれてありがとう」と利用者の家族に言われた。
◆「1人で訴えたら個人攻撃される」怖さも
初めての団交となった石川さんは「個人では成立しなかった労使の話し合いの場をつくれたのが大きい」と話す。さらに「1人で訴えたら個人攻撃されるかもしれないが、労働組合だと憲法や労働組合法などの法律で守られている安心感がある」と実感を込めた。
8月の第2回団交で、来年度以降の事業継続は実績により判断すると法人側が提案してきたため、団交は継続中だ。大高理事長は取材に「団体交渉継続中のため、回答は差し控えさせていただきます」とメールでコメントした。
労働者の権利 憲法28条は労働者が対等な立場で経営側と交渉ができるよう労働三権を保障している。労働者が団結して労働組合をつくる団結権、賃金などの労働条件を経営側と交渉する団体交渉権、交渉で話がまとまらない場合はストライキなどをする団体行動権の三つだ。労働組合法7条は経営側に対し、労働組合の正当な活動を妨害する不当労働行為を禁止する。具体的には「団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」など。このため経営側は労働組合が申し入れた団体交渉に応じる義務がある。
高齢者を対象にした介護施設「こひつじデイサービスわが家」(東京都葛飾区)で働く施設長ら職員9人が、経営側の社会福祉法人が示した閉所方針を撤回させた。即座に結成した労働組合で団体交渉を行ったことが功を奏した。施設長の石川美帆さん(46)は「1人では立場の弱い労働者が組合をつくって職場や雇用を守る先例になれば」と話す。(畑間香織)
◆「赤字なので閉所」口止めまでされて
「時期未定だが3年連続赤字を理由にデイサービスを閉所する」。石川さんによると、6月3日に施設を運営する社会福祉法人葛飾福祉館(同)の大高幹理事長と理事1人から施設の閉所方針を突然告げられた上、他の職員に伝えないよう口止めをされた。石川さんは赤字の改善策を相談する機会や、経営会議の開催を求めたが、法人側は応じなかったという。
「あまりに一方的でひどい。利用者や現場を無視している」。そう感じた石川さんは、何かできることがないかと考えるため労働基準監督署や、区の法律相談を頼った。副施設長の福原忠彦さん(46)の紹介で1人から加入できる地域合同労組「全国一般東京東部労働組合」(同)にも相談。閉所が経営側の一存だけで決めることができず労働者や利用者に相談する内容だとして、労働組合を通じて法人側と交渉できる可能性があると知った。
◆「施設を守ってくれた」利用者側から感謝
法人は保育園や学童保育クラブなど10施設以上を運営し、このうち「わが家」の利用者は定員24人。職員は常勤4人と非常勤12人の計16人が法人と雇用契約を結んで働く。石川さんは「閉所は職員の雇用問題だけでなく、利用者やその家族の暮らしを支える地域の社会資源をなくす」と考え、計9人で6月26日に東京東部労働組合の支部として労組を結成。閉所方針の撤回や赤字を放置し続けた責任を取ることなど9項目の要求書を法人側に出した。
7月の第1回団交で労組と法人が交わした確認書には「法人は、理事長と一部理事が決めた廃止方針を撤回し継続する」と明記。労組は利用者やその家族らに閉所方針撤回の結果をお知らせで報告した。「組合をつくってデイサービスを守ってくれてありがとう」と利用者の家族に言われた。
◆「1人で訴えたら個人攻撃される」怖さも
初めての団交となった石川さんは「個人では成立しなかった労使の話し合いの場をつくれたのが大きい」と話す。さらに「1人で訴えたら個人攻撃されるかもしれないが、労働組合だと憲法や労働組合法などの法律で守られている安心感がある」と実感を込めた。
8月の第2回団交で、来年度以降の事業継続は実績により判断すると法人側が提案してきたため、団交は継続中だ。大高理事長は取材に「団体交渉継続中のため、回答は差し控えさせていただきます」とメールでコメントした。
労働者の権利 憲法28条は労働者が対等な立場で経営側と交渉ができるよう労働三権を保障している。労働者が団結して労働組合をつくる団結権、賃金などの労働条件を経営側と交渉する団体交渉権、交渉で話がまとまらない場合はストライキなどをする団体行動権の三つだ。労働組合法7条は経営側に対し、労働組合の正当な活動を妨害する不当労働行為を禁止する。具体的には「団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」など。このため経営側は労働組合が申し入れた団体交渉に応じる義務がある。