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インドネシア新幹線は中国が建設へ

2015年10月18日 | 鉄道・リニア新幹線・航空機

インドネシア新幹線計画が一旦白紙と発表された時、「インドネシア新幹線はどうなる?」を書こうとしたら、中国が持って行ってしまったので題名を変えました。

 

インドネシア新幹線は、今のところジャカルタ-バンドン間の高速鉄道計画ですが、距離が140㌔㍍と短くて、本当に高速鉄道が必要なのか、疑問に思った人が多いと思います。

 

地図のように、ジャカルタは北側に海があり、近郊を含むと約3000万人が住みます。一方のバンドンは内陸部の都市で標高約700mにあるので比較的涼しく人口は約250万人です。現在、ジャカルタ―バンドン間は鉄道で約3時間かかります。

  (インドネシア政府観光局のホームページの図を修正しました)

 

 

ジャカルタ―バンドン間と言われても、実感がわからないので日本に当てはめてみます。東京駅―新富士駅間は約146㌔㍍なので、ほぼ同じ距離です。ただし、バンドンは標高が高いので軽井沢にすると、東京駅―軽井沢駅間は約147㌔㍍とほぼ同じ、軽井沢の標高は940㍍と240㍍高いが、まあ許容範囲としてください。私は横浜に住んでいるためか、東京駅―新富士駅間と言われると短い感じがするけど、東京駅―軽井沢駅なら結構な距離があるように感じるので、高速鉄道も必要かなと思う。

 

この計画の元々は、ジャワ島の西端にあるジャカルタと東㟨にあるインドネシア第二の都市スラバヤ(人口約300万人)を結ぶ計画だったようです。

 

日本のJETRO(日本貿易振興機構、要は経産省)が平成21年に出した調査報告書(*1)によると、ジャワ島を横断するジャカルタ―スラバヤ間(直線距離は670㌔㍍)の高速鉄道は、

①山岳地帯を通ってジャワ島南部ジョクジャカルタを経由するルート

(なぜかジョクジャカルタより手前のバンドンは通らない)

②ほとんど平地のジャワ島北岸を通るルート

の二つを候補に挙げて検討し、②案のジャワ島北岸を通るルートを推奨しています。しかし費用が巨額(約2兆円)で実現しませんでした。 

 

その後に、実現可能性のあるルートとして、ジャカルタ―バンドン間の高速鉄道が提案(この提案がインドネシア側からなのか、日本側なのか、調べた資料からでは不明)され、平成24年の経産省の調査報告書(*2)でバンドンルートが検討されています。

 

ところで、東京駅―軽井沢駅間の料金は、指定席の特急料金+運賃で5910円です。前記の平成24年の経産省の調査報告書(*2)では、ジャカルタ―バンドン間の運賃を1800円弱と想定しています。この調査報告書では、バンドンまで旅客を39000人/日としているので年間1400万人、平均運賃を1500円とすると鉄道会社の年間の旅客収入は約210億円になります。

 

これでは売り上げ(運賃収入)が少ないので、インドネシアの高速鉄道は、かなり安く造らないと赤字経営になってしまう。いくら高速鉄道の建設費をインドネシア政府が出さないとしても、運営で赤字が出ると建設費を返済出来なくなる。(建設費は約6000億円強で、中国は金利2%で貸すようですが詳細不明)一般的に、距離の短い鉄道の運営は厳しいので、延長しようにも巨額の費用がかかるので、どうにもならなくなるかもしれない。

 

まとめると、このインドネシアの新幹線計画は、かなりのリスクがあるということでしょう。何でも新規なプロジェクトにはリスクを伴うのは仕方がないことで、遠くにいる我々にはその是非を判断しようが無い。現地を知っている人はこの新幹線計画をどのように考えているのか、聞きたいものです。

 

そうすると、インドネシアに高速鉄道は必要かという基本の議論に戻るかもしれない。これまでにも、ジャワ島の現在の鉄道(日本と同じ線幅の狭軌)は日本の援助で改良されてきて、日本から中古の車両が多数送られています。ジャワ島には中速で安定して運用できる鉄道があるので、次は高速鉄道ということなのでしょう。

 

それじゃ中国による高速鉄道建設とその後の運営はどうなるか?でしょう。

前述の平成24年の経産省の調査報告書(*2)には、運賃や建設費、旅客需要などが出ていますが、黒字化が何年後とか毎年の収支などの具体的な収支計算はありません。

それで課題だけをあげると

・山岳地帯を行く鉄道(トンネルや橋も多いはず)を3年という短期間で作れるか?

・日本と同じ地震と火山の多いジャワ島で、地震対策は万全か?

・路線が短いので、経営は苦しいはず

・熱帯の地震国の山岳路線ということは、維持費が相当かかる

中国が持っていない技術があるなら、日本企業から調達できるので、これらは障害とはならない? あとは造ってみないとわからない。

 

ところで、日本はジャカルタ市内の高速鉄道(地下鉄と高架)の第1期工事の6工区全てを受注しているので、インドネシアとしてはジャカルタ―バンドン間の高速鉄道は中国と決めていた?とも思います。このジャカルタ市内の高速鉄道の工事は遅れ気味だそうです。

 

(資料)

(*1)平成21年のJETROの調査報告書

http://www.jetro.go.jp/ext_images/jetro/activities/contribution/oda/model_study/earth_infra/pdf/gaiyou03.pdf

(*2)平成24年の経産省の調査報告書

http://www.jetro.go.jp/ext_images/jetro/activities/contribution/oda/model_study/infra_system/pdf/h23_result03.pdf

 

(補足)バンドンからさらにスラバヤへ延伸する場合

①バンドンから、ジャワ島北岸の平地に出るルート

②ジャワ島南部の観光地、古都ジョクジャカルタ(人口約40万人)を経由するルート

が考えられます。②の有名観光地を経由する場合、山岳部を通らなければならないし、費用も増える。①は建設が比較的容易でしょうが、ジャワ島北岸の都市にどれだけの旅客需要があるのでしょうか? 両案ともそれぞれ一長一短があり、バンドンから先の延伸は視界不良というべきでしょう。

当然この延伸部も中国が建設することになるのでしょうが、バンドンまでの路線の建設と経営がどうなるかによって変わってくると思われます。

2015.10.18

2016.02.24 ジャワ島の図を解り易くするために入れ替えました。

 

インドネシア新幹線の続きはこちら

 


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