漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第5章 その17

2007年11月23日 23時57分16秒 | 漫画家
( この写真は、前回に引き続きJ・Aプロの開かずのドアである・・・。 木札の上に「明」
 という紙切れが貼ってある・・・。 J先生が先週の金曜日に貼った「○月」、そして月曜日
 にはこの「明」が貼ってある。 この「明」の意味は・・・賢明なる読者諸兄には、もう察
 しがついている事と思いますが・・・『今日の仕事は休み。次回は明日!』という意味であ
 る。 仕事が無いのではなく、締め切りギリギリまで先送りするのである。担当編集員も楽
 ではないだろう・・・。 《 2007年11月 撮影 》 )
  
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
   
               その17
 
 
「 蟹工船 」の作者、小林多喜二は、警察署内の拷問( 逆さづりにされて、
竹刀などてメッタ打ちにされる )で死んだ事は、有名な話である。 
 
日中戦争( 昭和2~20年 )から太平洋戦争( 昭和16~20年 )へ突入して
いった当時の日本で戦争に反対したり、労働者の権利を主張したり、いわ
んや天皇制を否定する様な事を書いたりすれば、刑務所に直行。そして拷
問によって発狂するか死ぬか・・・生き残っても主義主張を捨て( 転向 )
させられて後、即招集、弾よけ要員として最前線へ飛ばされて・・・・・
 
まったく夢も希望もない。 「 愛と平和 」そして「 平等 」を説く「 健常
者 」はみんな刑務所に投獄される戦時下の「 狂気 」( 歴史 )に「 漫画 」
という表現で挑みかかる事に私は少なからず喜びを感じていたのです。
 
1988年。 ヤングJ誌の別冊「 Bアーズクラブ 」編集部では、一部の新人
に連載を始める前段階の「 育成 」として100ページの文芸作品制作のチャ
ンスが与えられていました。私以外では○々木亮氏( 1994年死去、彼の死に
ついてはいずれ・・・ )などが夏目漱石( 私の大好きな )を原作にして「 こ
ころ 」「 それから 」などを描いていました。
 
私も本音を言えば・・・漱石や芥川龍之介などを描きたかったのですが・・
・・なぜか小林多喜二なのでした・・・・・。
 
担当編集員のK氏が私の何処を見て多喜二を選んだのかは、今でもよく分
りません・・・。私の体から「 反体制 」のオーラでも漂っているのか・・
・・・・。
 
きっと、自分でも気づかない潜在意識の底から湯気のように「 反骨精神 」
だの「 階級意識 」だのといった「 情念 」が沸き上がっていたのかも知れ
ません・・・・。
 
 
「 社会主義 」「 階級闘争 」「 プロレタリア革命 」・・・・いったい何ン
の呪文やら、さっぱり分らなかった16歳の頃( 1971年 )に話を少し戻さ
せて下さい・・・・・・・
 
本も読まず、学びもせず、毎夜自慰にひたり、ただ漫画ばかり読んでいたバ
カ高校生の私に「 社会主義 」の影響を与えたのは高校の友人、中江君( 仮
名、中江誠。父親は東京目黒の医師。文化財の様に美しく大きな洋館に住む
美男子 )でした。
 
中江君は・・・例えて言えば・・・「 巨人の星 」( 講談社・川崎のぼる・原
作、梶原一騎 )に登場する花形進・・・・の様な感じだったでしょうか・・
・・・。(顔はメガネをかけたJ・レノンに近いか・・・)
 
学校ではクラス違いの同学年。しかし、彼は私より一歳年上でした。元々は
東大への進学率も高い某有名高校から落ちこぼれて( 教師とケンカして )来た
のですが、それでも成績は我がバカ高校でダントツの一番。高一で生徒会長
を務める様な行動的な秀才でした。
 
そんな彼と私なんぞが、なぜ知り合ったかと言えば・・・面白い偶然ですが
・・・彼も漫画が好きだったからなのです。( 正直、私より漫画が上手かっ
た・・・! )
 
一歳年上なだけでも精神年齢は歴然とした差がありましたし、IQだって相
当な差が・・・・・
 
つまり、私は彼の金魚のフンみたいに後からくっ付いて行くだけでした。金
持ちで頭が良くて、背が高い女子高生にはモテモテで、おまけに漫画も上手
い・・・スゴイ( 本当は不愉快な )奴でした。
 
その彼が私に一冊の文庫本、マルクスの「 共産党宣言 」を差し出します・・
・・・・
 
 「 これ貸してあげるよ。読んでみな・・・面白いぜ! 」
 
私は素直にその本を受け取り、さっそく自宅で読み出して・・・愕然としま
す・・・・・
 
 『 全然、理解出来ない! ・・・オレってバカ過ぎ・・・? 』
 
数ページ読んだだけでお手上げ・・・! 私は自分の無能力にすっかり落ち込
んで、その本を返しに行きます・・・。
 
 「 そうか・・・・・・じゃあ・・・あげるよ、それ。 」
 
彼はやさしく笑って、私に「 共産党宣言 」を渡し・・・
 
 「 いつか、きっと解る時が来るよ・・・ 」
 
その言葉に嘘はありませんでした・・・・。3年後、時給370円の皿洗いパー
ト労働者になった時に、その本を読み返しました・・・毎日、即席ラーメン
をすすりながら・・・ゆっくりと・・・1ページ1ページ、胃袋の中に「 イ
デオロギー 」はしみ込んでいったのです・・・・・。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その18 」 へつづく・・・



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コメント (8)
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