( この写真は、J・Aプロの玄関ドアに付いている張り紙である。金曜日の朝11時頃に
貼られるこの『○月』マークの意味が判りますでしょうか? 判る方にはJ・Aプロより
素敵なプレゼント・・・・・・など、あるわけもないのですが・・・・・・。答えは本
編の文末に・・・!《 2007年11月 撮影 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その16
「 Yさん、小説を漫画にしてみませんか? 」
S英社ヤングJ誌の編集員K氏の言葉です。 「 原作付きで漫画を描きません
か? 」と言えば「 あなたのストーリーはつまらない 」と言っているのと同じ
ですが、「 小説を漫画にしてみませんか? 」という言い方は相手を傷付けな
い絶妙な台詞です。
1990年前後から、太平洋戦争以前に亡くなった明治・大正の文豪たちの著作
権が失効したために、安い経費で漫画の原作に出来た訳です。
この頃、S英社ヤングJ誌では賞を取った新人を育成するために文芸シリーズ
として、日本文学を原作とした漫画を別冊で掲載中だったのです。私もその企
画の網にすくわれた訳です。
突然「 小説を漫画に・・・ 」と言われて、よく意味が判らずに戸惑っている
と、編集員K氏はプレゼントなどを渡す時に相手の反応を注視する時の様な目
で私を見ながら・・・
「 小林多喜二の『 蟹工船 』なんだけど・・・ 」
「 蟹工船 」と言えば、昭和初期に特高警察よる拷問で撲殺された小林多喜二
の代表作である。その反体制プロレタリア文学は、私の好きな「 暗い 」世界
そのものでした・・・。私が20歳の頃に読んだ「 蟹工船 」の悲惨な労働者や
船倉の薄暗い加工工場のイメージが頭の中を駆けめぐります。
ボンヤリした私の頭は、一秒で創作モードにスイッチが切り替わり・・・
「 はい! 」
K氏は、私の目の輝きと口元の引き締まった「 やる気 」を確認すると・・・
「 でしょう・・・? Yさんには、これがピッタかなと思ったんですよ! 」
自分の予想と期待通りの反応に、すっかり満足している様子のK氏。 私の目
には、久しぶりに「 やる気 」の炎が・・・・・・。 そして具体的な制作上の
話に入っていきます・・・。
「 一応、100ページでまとめて下さい・・・ 」
「 ひ・・・ひゃく~ゥ・・・?! 」
私は30ページほどの短編にでもするのかと考えていたのです・・・。「 100ペ
ージ 」と聞けば、普通プロ根性のある人間だったら、もう少し「 やる気 」を
見せるところだと思うのですが・・・・・私は・・・・・
『 100ページも描くのか・・・描いてる途中で死ぬかも・・・ 』
などと、少し弱気になっていました・・・・。そんな私をK氏は窺う様に・・
・・・
「 大丈夫ですよね・・・? 」
「 は・・・はい 」
私の心の中には挑戦する様な「 覇気 」と、なんとなく自信のない「 不安 」と
がゴチャ混ぜになった様な・・・複雑な心境でした。
それでも、私は不調のどん底から一歩踏み出していたのです・・・。
そして、私は「 蟹工船 」の漫画化に際して一つ心配な点があることをK氏に告
げました・・・
「 『 蟹工船 』には、これといった主人公( ヒーロー )が居ないんですよ
ね・・・漫画にするのに、チョット難しいかな・・・と・・・ 」
「 そう。そこが問題ですね・・・ 」
特定の主人公が無い「労働者たち」の物語・・・。 無理にでも主人公と、それ
に対立する「 強敵 」を作らなければならない・・・・・
「 内容を変えても良いんですか? 」
「 ええ、どんどん脚色して下さい! Yさんのやりたい様に! 」
「 はい。判りました! 」
ムクムクッ・・・・と、立ち上がる私の・・・・・・「 やる気 」。まだ若か
った頃( 1989年春、34歳 )の私の「 やる気 」である・・・。
「 漫画家アシスタント 第5章 その17 」 へつづく・・・
★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント第5章 その15」へ戻る 】
《 画像クイズの答え : 「○月」の意味は・・・今日(金曜)は仕事、お休み、
次の仕事は「月曜日」!・・・という意味でした! Jプロ、ヒマなんです! 》
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
★ 拙ブログ「漫画家アシスタント物語」(第1~4章収録)が書籍化!
全326ページ。第1章の一部漫画化! 秘蔵未公開写真19点、描き下ろ
しイラスト18点を含む画像総数148点! デビュー漫画「雨のドモ五郎」
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( 劇画「覇王の船」 + 小説「蟹工船」の二本立て! )が発売中!
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【 各章案内 】 「第1章 改訂版」 「第2章 改訂版」 「第3章 改訂版」
「第4章 その1」 「第5章 その1」 「第6章 その1」
「第7章 その1」 「第8章 その1」 「第9章 その1」
「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」
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「 Yさん、小説を漫画にしてみませんか? 」
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か? 」と言えば「 あなたのストーリーはつまらない 」と言っているのと同じ
ですが、「 小説を漫画にしてみませんか? 」という言い方は相手を傷付けな
い絶妙な台詞です。
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「 蟹工船 」と言えば、昭和初期に特高警察よる拷問で撲殺された小林多喜二
の代表作である。その反体制プロレタリア文学は、私の好きな「 暗い 」世界
そのものでした・・・。私が20歳の頃に読んだ「 蟹工船 」の悲惨な労働者や
船倉の薄暗い加工工場のイメージが頭の中を駆けめぐります。
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「 はい! 」
K氏は、私の目の輝きと口元の引き締まった「 やる気 」を確認すると・・・
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見せるところだと思うのですが・・・・・私は・・・・・
『 100ページも描くのか・・・描いてる途中で死ぬかも・・・ 』
などと、少し弱気になっていました・・・・。そんな私をK氏は窺う様に・・
・・・
「 大丈夫ですよね・・・? 」
「 は・・・はい 」
私の心の中には挑戦する様な「 覇気 」と、なんとなく自信のない「 不安 」と
がゴチャ混ぜになった様な・・・複雑な心境でした。
それでも、私は不調のどん底から一歩踏み出していたのです・・・。
そして、私は「 蟹工船 」の漫画化に際して一つ心配な点があることをK氏に告
げました・・・
「 『 蟹工船 』には、これといった主人公( ヒーロー )が居ないんですよ
ね・・・漫画にするのに、チョット難しいかな・・・と・・・ 」
「 そう。そこが問題ですね・・・ 」
特定の主人公が無い「労働者たち」の物語・・・。 無理にでも主人公と、それ
に対立する「 強敵 」を作らなければならない・・・・・
「 内容を変えても良いんですか? 」
「 ええ、どんどん脚色して下さい! Yさんのやりたい様に! 」
「 はい。判りました! 」
ムクムクッ・・・・と、立ち上がる私の・・・・・・「 やる気 」。まだ若か
った頃( 1989年春、34歳 )の私の「 やる気 」である・・・。
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