漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第5章 その51

2008年07月24日 21時35分10秒 | 漫画背景
( この写真は、1987年当時に撮影されたJプロ、アシスタントの仕事場風景です。平均年齢
  30歳代のスタッフ。今現在の平均年齢は54歳!《 1987年夏、撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
  
 
   
               その51
 
 
漫画背景ばかりを10年、20年と描いていると、自分の人生そのものがただ
の「 背景 」の様に影の薄いものになっていく様な・・・そんな、気がする
ものです。( 背中で木枯らしが吹いている様な・・・ )
 
私の様に一度でも作品を雑誌に発表できた者でさえそうなのですから、一
本も作品を世に出す事が出来ずにいたらなおさらだと思います。
 
人生の歯車が自分が望む方向とは全然違う方向へ進み、望むべき結果とは真
逆の結果に直面する。そんな時、人は泣くより先に笑うものなのです。
 
 
1982年、秋の深夜。Jプロの一番奥にあるJ先生の個室で、キタさん( 仮
称、当時30歳、Jプロ勤続12年目、私を含むサラ金トリオの一角。 )は、
先生と二人っきりで話し合います・・・・。
 
なぜ、500万円(現在の貨幣価値で約1000万円)もお金を借りたのか・・・? 
その事をキタさんは、最初の経緯から話し始めました・・・。
 
最初は少額の4,5万円から、しかし、徐々に借金は増え、高い利息の支払いに
迫られると月々の赤字額は膨らみ、さらに借金を増やしていく・・・つまり、
「 500万円も借りた 」のではなく、「 5年で500万円に増えた 」のです。
 
キタさんが500万円酒を飲んだり、遊んだりしたわけではまったくありません。
J先生にはその事がよく理解してもらえた様でした。 なぜならJ先生自身、
若くして有名人になり、財産を築いた事から金に窮した友人や身内から何か
と頼られる( 借金の依頼など )経験があったからです・・・・・。
 
キタさんはJ先生の目の前で上着から下着まで、着けている服を全て脱ぎ捨て
る様に借金地獄へ落ちていく過程を告白しました。
 
J先生はブランデーグラスを何度も口に運びながらジッと聞いています・・・。
そして、キタさんの話を聞き終えたJ先生は、静かにうなずきながら・・・・
 
 「 大変だったな・・・・・ 」
 
キタさんはJ先生の一言で救われます。
 
 「 Yちゃん(私)・・・先生は『 大変だったな 』って、そう言って
   くれたんだよ! 」
 
深夜から夜明けまで、J先生とキタさんは酒を一緒に飲みながら話し合った
そうです。借金の事は後日Jプロを担当する会計事務所とも相談した上で善
後策( 事実上、Jプロが肩代わりする )を練るという事で一件落着しました。
 
J先生は怒る事も説教する事も愚痴る事もなく、何気ない雑談で朝日が部屋
の中を明るくするまで付き合ってくれたそうです。
 
キタさんは、帰り道の夜明けの目白通りの事を何も覚えていはいません。きっ
と美しく澄み渡った秋空だったろうに・・・・。 夜、先生の所へ行く時の
事は生涯忘れる事が出来ないキタさんが、この朝の事を覚えていないのです。
 
なぜなら・・・普通の人が「 普通の朝 」をいちいち覚えていないのと同じ様
に・・・キタさんは、5年間の肩の荷を降ろし、やっと「 普通の朝 」を手に入
れたからではないか・・・と、私は思うのです。
 
ところが・・・・J先生を担当する会計事務所が、キタさんの事をまったく信
用していませんでした・・・!
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その52 」 へつづく・・・



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  して、すいませんでした!
 
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  変お世話になりました! 暗闇の中を私の手を引いてくれる様に、ご親切
  に接して下さいました! この場を借りてお礼申し上げます!
  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  




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9 コメント

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ラジオ拝聴しました (ジョン)
2008-07-24 22:01:42
ラジオ拝聴しました。yes先生のお言葉は、いつも勉強になります。

私自身で考えてみたのですが、絵が先か話が先かと言えば、話が先だと思います。なぜなら、「言い伝えや寓話」などというものがある以上、本来話を伝えるのには紙である必要さえなく、活字や絵は表現の一形態に過ぎないと思うからです。

日本昔話を見て、そう思うのです。

生意気を申しました、すみません。

私はyes先生の教えを守って読書に励んだ結果、いくつもの掲載を勝ち取ることができました。これからもブログ拝読させて頂きます。
返信する
ジョンさん、コメントどうもありがとうございました! (yes)
2008-07-25 03:23:33
私は、ストーリーというものについて考える時、実は、その奥に
もう一つの要素「ドラマ」というものあると思うのです。
 
「ドラマ」というのは、相当熟練した作家でもそれを解説するの
が難しい・・・と言われています。
 
非常に重要な要素でありながら、分かっているようでいて、具体
的に説明しにくい「物語」の心臓・・・といった感じでしょうか・・・。
 
ジョンさんが、さらに活躍されますように・・・! どうか、「心臓」
が打ち出す熱い血の流れる作品を描かれますように・・・!
 
それにしても・・・このブログを読んでいてくれる人の中には、私が
「先生」と呼ばねばならない様な人(ジョンさんも)がけっこう
おられる様で・・・・・
 
身が引き締まる思いです・・・!
  
返信する
Unknown (なべ)
2008-07-25 08:57:50
約20年の月日がながれたのですね…

自分は20年続けた事は無いので素晴らしいですね。
返信する
本質を見失う (山本)
2008-07-25 11:38:47
後悔先にたたず、という経験も多いですね。
現状からとにかく逃れたいという思いが凝り固まって思考が回らなくなってしまうんでしょうか。

水から徐々に沸騰させていくと感覚が麻痺してしまうのかカエルも気がつかないままに……
最近の教育委員会の事件もそんな感じがします。
返信する
まだどうなるのかはわかりませんが…。 (ポンポン)
2008-07-25 20:11:53
とりあえず、キタさんが精神的に楽になったようなので、安心しました。
それと、イエスさんは『背景ばかり描いていると、人生そのものが影の薄いものになっていく気がする』と言っていましたが…私はマンガを読む時、背景も結構見ます。
確かに背景の重要度は、キャラクターや物語より劣るかも知れません。
ですが、背景の良し悪しでマンガの説得力が違ってくるのではないかと…私は思います。
ですから、イエスさんの人生は決して影の薄いものではないはずです。
少なくともこのブログに集まっている人にとっては、『マンガ家アシスタント・イエスさん』が主役なのですから。
少し自分事が入ってしまいましたが、これからもブログ応援します。
それでは失礼します。
返信する
惚れそうです(笑) (ラティ)
2008-07-26 01:33:36
J先生の・・

大変だったな・・

の言葉、素敵すぎです!
J先生もいろんな方の借金事情が知ってるから
こそ、キタさんの借金の理不尽さ(利息が
利息を呼んで雪だるまみたいな)とかも
わかったんでしょうけど・・

でも。。今の貨幣価値でそのままでも、
500万円ってすごいですからね・・・

それを、なんで・・どうして・・と
責める事もなく、大変だったなという言葉は
なかなかでないですよー。
しかし、会計事務所がそうはいかない・・
とは、まあ、よく考えたらそうなんでしょうけどね^^;
500万の借金もするやつを普通は信用
してよ、っていっても信用できないですもんねー
うーん。どうなるのか楽しみです!
返信する
なべさん、山本さん、ボンボンさん、ラティさん、コメントありがとうございました! (yes)
2008-07-26 02:58:14
 >なべさん、へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
「20年続けた」というよりも「続けられた」という方が正確かと
思います。
 
うだつは上がりませんでしたが、師匠の軒下で雨露をしのがせて
いただいております。
 
なべさん、コメントありがとうございました。
 
 
 >山本さん、へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 >現状からとにかく逃れたいという思いが凝り固まって思考
 >が回らなくなってしまう・・・
 
そんな感じですね。「蟻地獄」にしろ「煮カエル」にしろ、死へ
向かう絶望的な状況です・・・。
 
だから私はこうしてブログを書いているのかもしれませんが・・・
・・・・・・
 
 
 >ボンボンさん、へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
お気遣いいただき、ありがとうございました。「主役」だなんて
言われたのは初めてです。
 
 >少なくともこのブログに集まっている人にとっては、『マン
 >ガ家アシスタント・イエスさん』が主役なのですから・・・
 
自分は縁の下でクモの巣やホコリにまみれて仕事しているだけか
と思っていたのに・・・・・
 
励ましのコメント、どうもありがとうございます! 
 
背景描いて34年、老兵yes・・・まだまだ描きます、描き続けます!
  
 
 >ラティさん、へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
私にとっても、J先生の言葉は意外でした。 きっと、顔を赤く
して怒ったのではないかと想像していたのですが・・・事実は逆で
した。
 
静かに、キタさんの苦労を察してくれたのです。 私にとっては、
羨ましいほどですが・・・・・・
 
実は・・・・・キタさんの苦労はまだ終わってはいません。 もう一
山、峠を越えねばなりませんでした・・・・・そのお話は次回に!
   
返信する
カッチョエエ (マルボンズ)
2008-07-26 03:25:37
j先生かっこええ!
最近はj先生の漫画は読んでませんでしたが、また読みたくなりました。本当に●●雲みたいな、、、、。しぶい。
ちなみにガイコツ君小学生のころ単行本で購入した記憶があります。今度田舎に帰ったら探して読もうっと。
返信する
マルボンズさん、コメントどうもありがとうございました! (yes)
2008-07-27 04:40:24
J先生の「ガイコツ君」は、一般的にはJ先生のデビュー作とい
うことになっている様です。 ご愛読いただけます様で・・・師匠
に代わりましてお礼申し上げます!
 
今年の1月に体調を崩し(軽い糖尿)てからは、医師の忠告に従
った事による効果なのか、現在は大変元気に創作活動に励んで
おります!
 
今は夏休みの前の追い込みをかける時期ですので、少し忙しいの
ですが、夏バテに気を付け(スタッフ一同寄る年なみには勝て
ず・・・)つつ奮闘しております!
 
お盆休みのご帰郷(?)、どうか、お気を付けて!
  
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