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罪悪 フェルディナント・シーラッハ

先日読んだ同じ著者の「犯罪」と同じく、弁護士である著者が実際に携わった事件や犯罪者について短い文章で綴った短編集。事件については未解決であったり後日談だったり色々、登場人物もどうしようもない犯罪者であったり犯罪者と言えるかどうか判らないような人だったりで、実に千差万別、バラエティに富んだ内容だが、こうした事件や犯罪の軌跡をたたみかけるように読んでいると、本当に犯罪とは何だろう、犯罪者とは何だろうという、不思議な気分になってくる。読んでいて、クールなようで実に人間味のある著者の眼を通した「社会」というものが立ちのぼってくる様は見事というしかない。それにしても最後に収録されている「秘密」については、なんと言えばいいのだろう。本気で著者がその後どうなったのか心配だが、その題名も含めてニヤッと笑って読み過ごすべきなのかもしれないし、そもそもこれを書いたのは誰なんだということにもなるし‥。少なくともこの1篇で本書は、読者の脳裏に深く刻み込まれる驚愕の作品となったことは確かだ。(「罪悪」 フェルディナント・シーラッハ、東京創元社)

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