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ホトガラ彦馬 井川香四郎 

副題は「写真探偵開化帳」。知らない著者の本だったが、本屋さんの新刊コーナーで見かけ、物語の設定と副題が面白そうだったので読んでみた。時代は江戸から明治に変わり、日本が西洋をお手本にして急速に変化を遂げた時代、ミステリー的にいえば、ようやく法律、法医学、警察組織が整備され始めた頃の物語だ。日本最初と言ってもよいくらいの写真家で、医学や化学にも通じた主人公が、それらの知識を使って、幕末に起きたある事件の真相にせまっていく。明治の元勲が数多く出演していて賑やかだ。物語は、「西郷隆盛だと確実に判っている写真はない」という良く知られた事実をうまく取り込んで、それを巡る謎と事件がスリリングに展開されていく。明治初期の混乱、特に新しい時代をそれぞれ目指しながらも策略に明け暮れる明治政府の政治家達の描写が面白い。また、全ての謎が主人公によってきれいに解明されるという感じではなく、終わりのないドタバタ劇を見ているような不思議な感じのままで終わるので、どうしても続編を期待してしまう。描かれた時代そのものの魅力だけで次が読みたくなるような1冊だ。(「ホトガラ彦馬」 井川香四郎、講談社文庫) 

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