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さきたま緑道は万葉と歩む道

2021年05月15日 | 雑記

先日の万葉集の講座(「古代東国の叙情―東歌を訪ねて」)で県内に万葉歌碑が25基あると聞いた。自宅近くの「さきたま緑道」でもいくつか見かける特製の立て札に書かれた万葉歌。立派な石碑とか歴史あるものではないので、当然この数には含まれていない。だが、この機会に調べてみようと久しぶりに終点まで歩いてみた。その最初は「<スダジイ>家にあれば笥(け)に盛る飯を草枕 旅にあれば椎の葉に盛る」と作者、巻・歌番号とともに書かれている。そばに立つ樹木はスダジイという椎の木の一種。少し歩いた松の木のそばには「<クロマツ>昨日こそ君は在りしか思はぬに 浜松が上に雲とたなびく」。今まで気にも留めなかった緑道に植えられた樹々。それぞれにつながりのある歌碑となっているようだ。以降、クヌギ、ハンノキ、ヤブツバキ、ハギ、ユズリハ、クロマツ、ノシバ、ヤマブキ、シダレヤナギ、シダレヤナギ、タブノキ、ウツギ、ネムノキ、アセビ、スギ、シラカシ、ウメ、ケヤキ、ウメ、ウメ、ヤマザクラ、ホウノキ、コナラ、ヤマブキ、ヤマザクラ、ツゲ、ケヤキ、アセビ、アジサイ、ヤブツバキと続いて全部で32基に同数の歌(クロマツやシダレヤナギなどは2回、ウメは3回詠まれている)。歌碑の数もそうだが、道に植えられている樹木の種類の多さにも初めて気が付いた。一番気になっていた東歌は後半の25番目でやっと発見。「<コナラ>下毛野(しもつけの)美可母(みかも)の山の小楢(こなら)のす ま麗(ぐは)し児ろは誰が笥(け)か持たむ (巻14三四二四)」。歌碑の後方遠くは栃木県の三毳山の方向では、と安堵したついでに勝手な想像も。この緑道は北鴻巣駅近くの赤見台近隣公園から始まり、特別史跡・さきたま古墳群までの4.5km。今は文字どおり初夏の緑滴る散歩道。万葉集にあるものの歌碑には無いヤマボウシが存在を示すかのよう白い花を咲かせる。現代アートの彫刻が点在、そして樹木や草花に心を寄せた万葉歌人の思いに浸りつつ古墳時代へと続く贅沢な道。いつものように急ぎ足ではもったいない。