スケッチブック30

生活者の目線で日本の政治社会の有様を綴る

スケッチブック30(天皇制⑥)

2019-04-21 16:06:51 | 日記
4月21日(日)
 戦後の天皇制を一口で称すると、能動性の少ない天皇制であると言えると思う。天皇は主権者ではなく象徴とされたから、国政への関与の度合いはぐっと下がった。権能を有しないとの文言は、実質的には戦前の昭和天皇の振る舞いと同じとも言えようが、権限があるのに行使しない事と、権能がないと決めつけられるのとでは、天皇の重みというか権威の度合いが大違いになる。
 しかし天皇は相変わらず神である。普通の人間に象徴が永続的に務まる筈がないからである。例えば私たちの世代で巨人軍の象徴と言えば川上か長嶋であったが、今川上哲治を知っている人がどれくらいいるであろうか。長嶋だってそのうち忘れ去られよう。神でなければ人格を持った存在が象徴になど成れない。国旗とか校章などは人格がないから永続して象徴と扱われる。だから天皇は相変わらず神であるが、その色彩というか国民の前に現れる姿の濃密さとかいう点で、戦前に比べれば明らかに濃度が薄くなっている。言い換えると神に変身する度合いが減ったということである。これは、戦後は天皇を認識する為の意図的二面思考を、それほどしなくて良くなったということである。その分社会現象の背後を探って構造体とか論理を探るまともな思考が出来るようになった。
 日本国民が力で動く国際政治の実態に詳しくなったから、外交の失敗と言ってもまだ戦前の残滓に毒されている、外務省の古手連中が意図した常任理事国入り活動くらいの、さほど実害のない失敗に留まるようになった。中国と韓国がつけ上がった事にも依るが、日中及び日韓関係は本質的に敵対的なものだとの認識も、人々の間に広がってきた。何より空想的社会主義者の言説が急速に萎んできている。私の住む町の駅前で時折、憲法を守れ式の街宣が行われるが、昨日が選挙投票日前日だったからなのかやっていたが、立っているのは可哀そうなくらいよぼよぼの老人ばかりだ。朝日新聞は部数減を隠しているらしいが、高血圧患者の突然死リスクが高いように、そのうち一挙に倒産するのではないか。これらは日本人が思考の深度を深めてきている所以だと思う。
 バブル崩壊以降というかリーマンショック以降というか、日本経済の停滞ぶりははっきりしている。理由は色々あろうが政府の政策が間違っていたからであることは確かだろう。ならば従来の政府の政策を正そうとの動きが、かなり出てきているように感じる。もし方向転換できるのなら、とにかく中国駐兵に拘った戦前とは、違う思考方法が日本人に根付いた証拠となろう。
 これらは良い動きであるが、一つだけ心配なことがある。それは日本はこれから中国韓国と死活の闘争に直面すると思うが、それは国民に明治維新後の時代のような緊張と努力を強いると思うが、天皇が象徴で国民が耐えられるであろうかとの心配である。もっと濃度の濃い神でなければ国民が纏まらないのではないかと危惧する。しかし敗戦を経験した日本人はもう戦前の天皇制には戻れない。戦前の天皇は憲法上の規定などさておいて、日本人を不幸に導いた責任は、厳としてあり、国民もそれは認識しているからだ。とはいえ戦前の形を取らない濃度の濃い神としての天皇は、考え付かない。従ってある程度神性を人間から切り離す必要があるのではないか。例えば天皇を巫覡として神性は祖先の神々に託すとか。

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