フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 先日の『プロミスト・ランド』に続いて、封切り前の映画 『小野寺の弟 小野寺の姉』 を試写会で見てきました。公式サイトでは次のように紹介されています。

早くに両親を亡くしてから、年季の入った一軒家ずっと暮らしている小野寺進(33歳)とより子(40歳)の姉弟。一汁三菜の朝食を一緒に食べ、休日は一緒にスーパーの特売に出かける。いい年頃なふたりのこんな生活は、傍から見ればやや気のどくに映るかもしれないが、ふたりにとっては至って自然。ひたすら穏やかで和やかな日々を過ごしていた。そんなある日、小野寺家に1通の誤配達の郵便が届く。その手紙をきっかけに進とより子、それぞれの恋と人生が動き始める――。
お互いを大切に想い合う不器用な姉弟のそれぞれの幸せの行方は――。
そして、弟が抱える、ある大きな想いとは――。

 映画の基本のコンセプトはコメディです。試写会ですから、一緒に映画を見ているのはみな映画関係者。映画については目の肥えた人たちばかりですが、その人たちの中で笑いが聞かれるくらい、楽しく笑わせてもらいました。
 封切前ですからストーリーは書きませんが、それだけ笑わせて、そのうえで後半はほろりと泣かされます。

 脚本と監督は西田征史。映画『ガチ・ボーイ』で映画脚本デビューをし、その後『怪物くん』『妖怪人間ベム』などのテレビドラマの脚本を担当した西田征史が、脚本だけでなく、初の監督を務めた作品です。
 私が思うに、映画にはストーリーを見せる作品と、人物を見せる脚本があると思います。この映画は明らかに後者。西田征史という脚本家出身の監督さんの力量であり、大胆なストーリーや迫力ある映像で見せる映画ではなく、丁寧に人物を描いていきます。もちろん人物を見せるのにある程度のストーリーは必要ですが、けっしてそれが主ではなく、大きな事件よりも小さなエピソードを積み重ねることによって、少しずつ小野寺進、小野寺より子という二人の人物とその関係を描き出していきます。
 この人の監督・脚本でもっと映画を見てみたい。そんな期待を持たせてくれるいい映画でした。

                       







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