考えるための道具箱

Thinking tool box

あいかわらず。内田樹。

2005-08-21 00:35:58 | ◎読
グループ・インタビューのため土曜出勤。なかなか面白く、結果は現状のワークへよい形で着地させることができそう。GIの実行会社ともなんとなくよい協業関係がうまれそうだ。また土曜出勤のご褒美で、新しい拡がりが楽しそうな仕事のご用命も降ってきた。最近は、これまで取り組んだことのなかったタイプの仕事が動き出したり、いっぽうで、ちょいと気合いのはいるミッションなども与えられたりしてなんだか中期的な展望が開けてきた。

なーんてね。もちろんこれは妄想ではないのだけれど、まあ、ふだんはこんなふうに書くことはない。まるでどこかのセミナーに参加してきたようなようなこのホジティブ・シンキングは、きっと『健全な肉体に狂気は宿る』のせいだ。

『幸福論』の春日先生とのこの対談における内田師匠は、最近、過剰なまでのステイトメントを発信していてネタが枯渇しているのかと思いきやそんなことはまったくなく、ここでも新しいコンセプトをどしどし提示していて、あいかわらず、なんというかとてもクレバーだ。内田語録はともすれば箴言集になりそうでもあるのだが教条的教育的な部分を確実に回避しているため、説教には陥らず(※)、大人の男として格好いい物言いとして受け入れらる。その正しさはもちろん疑わなければならない部分もある。しかし、内田樹は、そもそも人はわかりあえないという前提に立っているだけあって、そのスタンスが聴く人に自由という余地をあたえるぶん、逆に信用度が高い。そこでは、疑う/疑わないなんて、肝の小さい話は吹き飛ばして、この師匠と議論をオルタナティブに(?)アウフヘーベン(?)したくなる。この言語能力・対話力は、どうやったら身につくのだろう。

以下、第4章までの抜書きの一部。

◎「ある意味『JJ』さえ読まなければAVなんか出ないですんだ少女たちというのが何百人かいるわけですね。そうなると罪作りなメディアだなあと思いますね。どっちにしても読者を「まとめてどこかへ連れて行く」メディアはあまり信用しちゃいけないんです。………だから、この本も…読んだ人が途方に暮れるような本にしなければなりません。」

◎「でも時間の中では「一秒後の私」はもう「今の私」とは別のものでしょう?だから「変わらない私」がどこかにいる「ほんとうの私」を探すことはあり得ないわけです。……そういう当たり前のことに気づかないのは、みんなが時間を空間的に表象しているからなんです。

◎「そこで「変人」戦略というものを採用する人がいるわけですね。春日先生とかぼくとか。「変人」というのは最初からマジョリティの端っこの方にいるわけですよね。群れの中にいるんだけれど、いつでも逃げられるように端にいる。」

◎「人間というのは、他人から聞いた話というのはあまり軽々には信用しないくせに、自分がいったことばというのは、どれほど不合理でも信用するんですよ。」

◎「たぶん洋服というのは、その人の一番弱い部分とか感受性のやわなところが外部に露出しているところなんでしょうね。粘膜みたいに。きっと。だから、(なにか指摘されると)すごく傷つきやすいんだ。」

◎「わたしのところに来るような患者さんというのは、だいたいこだわりとプライドと被害者意識の三点セットなんですが(笑)。」(春日)

◎「逆に、ものすごく出処進退の鮮やかな人もいる。いつのまにかやって来て、短い間に挨拶して、でもその一言がジーンと胸に残るような……そういう人を見ると「修行ができてるなあ」と思いますね。……「このたびはどうもご愁傷さまで……」「いや、遠いところをお運びいただきまして……ま、ご一献」「は、これはどうも……」みたいにそこそこにこやかに談笑して、七分三十秒後くらいに、ふと振り返るともういない(笑)。」

◎「ある大きなイベントには必ずそれと同じ強度、同じ規模の原因があると発想する人って要するに「原因が見つからないで困っている人」なんです。…………だからある状態の出現について、単一の原因を求める人というのは、「原因を探し求める」というみぶりそのものによって、「原因がうまくみつからない」という事実を認めているんです。」

ということで、休日が1日となって、またそれもなんだか忙しい1日になりそうなので、今日はここまで。なんとも無為なエントリーでした。八重洲の古書店で、ようやく星野智幸の『ロンリーハーツ・キラー』を見つけたので、ぼちぼち読み始めてみよう。

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(※)帯の「自分探し禁止!!」とか「説教ライブ!」なんてあほうな惹句はやめたほうがいいんじゃないですかね。編集者もサラリーマンだから仕様がないのだろうけど。

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