史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

足利 Ⅱ

2016年01月10日 | 栃木県
(足利学校)


史跡足利学校

 日本最古の学校として知られる足利学校は、もっとも古い説によれば奈良時代の創建といわれる。歴史上、明らかなのは、上杉憲実が現在国宝に指定されている書籍を寄進し、痒主(学長)制度を設けるなどして学校を再建したことである。
 天文十八年(1549)にはフランシスコ・ザビエルにより「日本国中、最も大にして最も有名な坂東の大学」と世界に紹介され、当時学徒三千といわれるほどになったが、明治五年(1872)その幕を下した。


入徳門

 入徳の額は、天保十一年(1840)に掲げられたもので、現在の建物は裏門を移築したものという。吉田松陰が当地を訪れたとき、聖廟の右区の欄間にあったというが、もともと学校門の正門に掲げられていたものである。
 嘉永五年(1852)四月三日、吉田松陰は盟友宮部鼎蔵とともに栃木の宿を出た。富田、茂呂、犬伏、天明を経て足利に入った。松陰は足利学校の刻明な見学記を残している。


学校門

 松陰の見学記によれば、まず「学校」の扁額を掲げる正面の門をくぐり、継いで「杏壇」(講堂)の二字を掲げた「廟門」を通り、聖廟を拝した。往時門に掲げられていた「杏壇」と「学校」という扁額は、現在方丈に保存展示されている。


杏壇

 孔子廟の前には、寛文八年(1668)創建の杏壇門がある。杏壇とは、孔子が弟子たちに教えたところに杏の木が植えられていたことに由来する。こちらの額はレプリカである。


孔子廟

 松陰の見学記は続く。廟の中は三区に分れ、孔子の座像を安置し、左には学校の創始者とされる小野篁の像が置かれていた。
 松陰は、孔子像は宋代のものと聞いたというが、実際には室町末期の天文四年(1535)に作られたものである。



孔子座像


小野篁像


足利学校 方丈


市立足利学校遺蹟図書館


 松陰は、学校に附属する文庫を見学し、膨大な経史の諸書が網羅されていることに驚いた。市立足利学校遺蹟図書館に、一万二千冊の書が引き継がれている。

 松陰のみならず、多くの著名人がここを訪れている。古くは蒲生君平、亀田鵬斎、立原杏所、渡辺崋山、梁川星巌、紅蘭、広瀬旭荘、佐藤一斎、高杉晋作。維新後も、細川潤次郎、青山延寿、佐野常民、重野安繹、関口隆吉、東郷平八郎、上村彦之丞、大隈重信、渋沢栄一、井上馨、乃木希典らの名前が確認されている。

 この日の午後三時、圏央道の白岡菖蒲と桶川北本が開通した。少し遠回りになるが、足利からの帰路、東北道から圏央道を使うことにした。新たに開通した区間を通ったのは、直後の三時四十分であった。少し車の量は多かったが、これまで一時間近くかかっていた区間を、十分程度で走破できるのは快感であった。これで自宅から東北へのアクセスが格段に向上することになる。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
史跡訪問の件 (渡辺)
2016-01-14 16:47:53
初めまして渡辺と申します。
突然のコメントで非礼ながら言わせて下さい。
幕末維新史跡訪問の閉鎖とても残念です。勝手ながら私はもう10年も前からこのサイトを参考に史跡を巡っていました。とても参考になりました。ありがとうございました。
そこでお聞きしたいのですが、植村さんはどういった文献や資料をもとに幕末の史跡を辿っているのでしょうか。おそれながらご教示頂ければ幸いです。
又、これからも史跡訪問の日々を楽しませて下さい。



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コメント有り難うございます (植村)
2016-01-16 22:42:52
渡辺様

長年、御覧いただき有り難うございます。
文献については、基本的には山川出版の「歴史散歩シリーズ」を参照しています。あとは訪問する方面によって書籍を探します。茨城県であれば天狗党、兵庫県であれば生野の変、奈良県であれば天誅組関係の本を漁ります。渡辺さんがお尋ねになりたい方面を教えていただければ、参考図書をご提示致します。
返信する
文献の件 (渡辺)
2016-01-17 11:25:49
植村様

コメントさせて頂きました。渡辺と申します。
返答ありがとうございます。
私事ながら私の居住地は東京の北区ですが、現在は大阪に転勤で住んでおります。
東京、関西の史跡情報に特化した文献があればご教示頂けると幸いです。宜しくお願いします。
返信する
参考図書です (植村)
2016-01-17 17:21:58
渡辺様

お問い合わせの件、参考情報として送ります。

【東京】
『東京「幕末」読み歩き』 三澤敏博 心交社
『幕末歴史散歩 東京編』 一坂太郎 中公新書
『天狗黨の跡を行く』 鈴木志乃夫 暁印書館

【京阪神】
『幕末歴史散歩 京阪神編』 一坂太郎 中公新書
『新選組と幕末の京都』 川口正貴 ユニプラン
『実録 天誅組の変』 舟久保藍 淡交社
『生野義挙日記』 太田虎一 生野教育委員会

これで不足であれば、また問い合わせください。
なお『生野義挙日記』は現地に行かないと入手できないかもしれません。
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文献の件 (渡辺)
2016-01-18 13:33:58
植村様

たくさんの情報ありがとうございます。

とても助かります。

大いに活用し、今後の史跡巡りに役立てたいと思います。

見ず知らずの者に丁寧にご回答頂き、ご親切 ありがとうございました。

勝手ながら又
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また、何かあれば (植村)
2016-01-19 22:34:07
渡辺様

また、何かあればお問い合わせください。
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