夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

一日

2012-04-07 08:16:47 | 創作(etude)
 
 「朝」

 生まれたばかりの
 空気を
 台所で
 母が刻む
 野菜の音が
 トントンと
 囃しをつけ
 火にかけられた
 鍋からは
 味噌汁の
 かぐわしい
 香りが空気を
 染めていく
 毎日
 違う朝
 違う一日の
 始まり
 きょうは
 どんな
 色に
 染まるのだろう
 期待と
 不安が
 台所から
 出発する


 「昼」

 お日様に
 温められた
 風が
 軒先に
 吊るされた
 鰊干しの
 一団を
 乾かしていく
 その鰊を
 見上げるように
 縁側で
 猫が
 日向に
 寝ている
 鰊を狙うのは
 他にもいて
 烏が
 何度か
 やってきては
 網が怖くて
 近づけない
 鰊干しは
 やがて
 この家の
 婆様の手で
 樽の中で
 鰊漬けになる


 「夕」

 朝の
 軽い空気が
 夕方には
 全体に
 暮らしの中に
 巻き起こる
 人々の
 夢から遠い
 現実との
 歪で
 すっかり
 重たく
 垂れこめている
 それでも
 町の
 人々が
 夕暮れには
 必ず
 見送っているのは 
 岩木山の
 左肩に沈む
 哀しみ色の
 夕日だろう
 明日こそは
 そう願って
 手を合わせている
 農夫も居る