朝から青空が広がって
堆積した2日前の白い雪を
反射鏡に
我が家から見える窓に
世界が明るく輝いている
いま起きて来た娘は
きょう32歳のバースディ
奇しくも
父親と同じ日に生まれてきた
長女Nは
脳性まひを
この世のパスポートに
携えて生まれてきた
そして次女はまた
姉のお下がりではなく
自分自身の脳性まひの
パスポートを
忘れはしなかった
もし仮に
この娘たちのいずれか
一人が
ハンディキャップもなく
生まれていたら
親は中途半端さの中で
その生まれついての
しょうがいを
悔やみ続け
不幸をひとりで
背負って生きただろう
たぶん
ピノキオの爺さんに
成り下がっていたかもしれない
病気がちだった幼いころ
次女は
てんかん発作を
繰り返していた
苦しそうにゆがんだ
お前の顔を
なんど肝を
冷やして
見ていた
ことだろうか
ひも回しをしたり
皿回しをしたり
紙をひらひらさせたり
夏の日には
お前は
水遊びが大好きで
プールでは
教えもしないのに
ラッコのように
水の上を
ぷかぷか
浮かんで
楽しそうだった
おはぎや
ケーキや
饅頭や
とにかく
甘いものが大好きで
いつも
腹時計が正確な
次女Mは
人間みな兄弟という
精神を貫いて
誰が食べ物を食べていようが
そのそばに近寄って
私にもちょうだいと
おねだりを
するのでした
いつも
誰に臆することもなく
こころを
素直に
正直に
おならをするのも
気分次第
言葉はなくても
喜怒哀楽は
その顔の表情一つで
誰にでもわかる
ピアノの大好きな
Mの曲想は
ジャズのような
喜びや悲しみを
時には
悲しく
時には嬉しく
聞いていると
いつも自由な
心地よさ
そんなMも
きょう2月8日で
32歳を迎えた
よくぞここまで
じょうぶになったねって
ほめてあげたい
きみがいたから
ぼく達家族は
いつも微笑みを
忘れることがなかった
希望を失うことはなかった
ありがとう
Mちゃん
誕生日
オメデトウ