音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

母乳 (レッド・ホット・チリ・ペッパーズ/1989年)

2012-01-30 | ロック (アメリカ)


ヒレル・スロヴァクとジャック・アイアンズの二人に変わって、オーディションの結果、ジョン・フルシアンテ(g)とチャド・スミス(d)の二人が参加。そしてこの4人がまさに、レッチリの黄金時代を築いていく、その記念すべき第1作である。だが、今までは正直この作品を聴いていて、前作とそんなに違うのかという部分は分からないし、次があの名作「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」だから(私はそっちを先に聴いてしまっているし)致し方ないかもしれない。ただ評論家ではこっちを高く評価する人も多く、私も結構音楽評論では偏るし、へそ曲がりだが、そういう輩は私以上だなぁと思っていたのだが、結構、ちゃんと聴きこむとそうでもないことが分かってきた。

旧メンバーでもテクニックは既に世界一だったレッチリ。しかし、何かが足りなかったのは意外にも「オリジナリティ」だったのではと・・・。だが、その開眼を目前にしてヒレルとジャックといいう逸材を失った。なのでこのアルバムでは相当アンソニーとフリーが引っ張っている。ある意味、その力関係が均衡してきた次作がいいか、その過程にあるこの作品がいいかということで、この2作品は評価が別れるところ。へそ曲がりでも、変わり者でもないようだ。特にスティーヴィー・ワンダーの名曲、"Higher Ground"ではなんとスラップを骨組にしているのは、ファンは愚か、かのスティーヴィーをも脅かせたらしい。たしかにこのイントロは「な、な、なんだ」って思うし、フリーのセンスと、このバンドにおける責任感を強く感じる(因みに私は彼のスラップ奏法がEBにおいては一番好きである)。ジミヘンの"Fire"も演奏しているが、この曲にギターは生前のヒレルの演奏である。実はこのレッチリはギタリストがこれから先も中々安定しないが、アンソニーはその理由は「誰もヒレルの穴を埋められないから」だと言っている。この演奏を聴くと、なるほどジミヘンをここまでアレンジしてしまうのはヒレルなんだろうと思う反面、レッチリはこれからドンドンメジャーな存在になっていく中で、フルシアンテこそ、レッチリのギタリストだというファンの声も多い。"Knock Me Down"は先行シングルになったがこれはまさにヒレルに捧げられた曲であるが皮肉にもこの曲がそれまでのレッチリの曲の中では、メジャー路線に彼らを誘導することとなった、そんな因果もあってのアンソニーの発言なんだと思う。また、同じくシングルになった"Taste the Pain"では、フリーがペットを吹くなど器用なところも見せているが、これがまたヒレルなきあとのリードを補佐しているようにも聴こえて凄く良い。さらに次の曲"Stone Cold Bush"では、まさにテクニックのオンパレード、曲なんて二の次で、どうだい俺たちのテクはと言わんばかりのフリーとフルシアンには良い意味で呆れる。うーんレッチリの「おバカ」な伝統はメンバーが変わっても健在。

この作品はアルバムチャートで初めて100位以内、52位まで上り、セールスも初めて200万枚を越えた。無論ヒット作が1000万枚という時代だから驚く数字ではないが、いや、それはセクシーなジャケットのせいだというワカランチンな評価をもらうなど、兎に角、彼らがメインストリームに登りつつある作品であった。だが、もしジャケットもその理由だというのなら、それは天国のヒレルの手招きだ。ファンには周知だがこのジャケットの作者は、なにを隠そうヒレル・スロヴァク、その人なのであるから。


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