音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ブラッド・シュガー・セックス・マジック (レッド・ホット・チリ・ペパーズ/1991年)

2010-11-01 | ロック (アメリカ)


冒頭から個人の音楽遍歴になってしまうが、私はロック音楽に3度出会っていて(何度か書いているが)その3度めのきっかけはニルヴァーナオアシスだが、私の中に眠るロック音楽に対する潮流を呼び起こした決定打となったのは、実はレッチリのこのアルバムである。レッチリに関して言えば、逆にロック音楽を聴かなくなりつつあったころこのバンドはデビューしていた。あの当時、もし、ニューウェープという第2のロックとの出会いの延長線上でこのバンドを聴いていたらずっとロック音楽も継続して聴いていたと思うが、当時はニューウェープの終焉に失望しつつまた、公私ともにせわしない時期で音楽にはもっと刺激が欲しくてジャズやワールドミュージックに走りつつあった頃であった。なので、オアシスを聴いた後にこのアルバムという順番であるから、残念ながらレッチリのこの作品はリアルタイムではなく、だからかも知れないが、とても興奮し、新しい感動と、再びロックを聴かなくてはという焦燥感にも苛まされた瞬間であった。

いまだに分からないのが、オルタナティブ・ロックの定義であり、実は、これはニューウェープよりも良くわからない。オルタナティブとは「異質な」「代わり」「型にはまらない」という意味だそうだが、音楽とは音符というひとつの定義があってその中に沿っていれば型にはまるもはまらないもない。ましてやこの定義は地球の自転や空気の様に自然界にある法則のようなもので、それをたまたま人智で楽典という形で発見した物理学に近い。だが、敢えてそこをオルタナという言い方をしているのも興味がある一方で、ニューウェープロックのように分類・体系化が益々難しくなって来たという表れなのかも(何しろ、型にはまらず、代わり、であるのだから)しれない。ただ、レッチリに関してはオルタナというより、完全にラップ・ロックという様相が強い。私はラップは苦手だが、レッチリが好きなのはそもそもがメロディアスな曲構成をしているからである。ラップの面白さはリリックの良さであって、同時に日本のラップアーティストはリリックの趣が深くなく、この辺りは短歌や俳句の国なのに、こと、ラップミュージシャンのリリックには川柳的な面白さがないのは残念だ。当然、アメリカのミュージシャンのリリックは私程度の英語力では今一つ伝わってこなく翻訳なんて訳した言葉に勝手に韻を後付けしているだけで全く面白くない。そこを分析すると明らかに旋律の面白いもの、好きなものは、邪道かもしれないがリリックは二の次になっても音楽的に評価し受け入れられるというのは大きいは、私がレッチリにはまったのはまさにこの点である。概して言えば、ニルヴァーナやオアシスには新しさを感じ、レッチリには懐かしさを感じたのかもしれないが、このアルバムのお陰でオルタナにはまることになった、まさに「型にはまらない」の逆になってしまったのだ。このアルバムは73分ととても長い。昔のアナログで言えば2枚組に相当するが、その点で言えば、クラッシュの「サンディニスタ!」に相当する価値があり、私の音楽鑑賞歴の中でもかなり重要なアルバムになっているのは事実である。アメリカでの評価も高く、シングルカットされた「ギヴ・イット・アウェイ 」がなんとグラミー賞を獲得、また「アンダー・ザ・ブリッジ」がシングルで初の全米1位を獲得した。

誰でもそういう事があると思うが、好きな音楽こそ、実は上手く言葉や文章に出来ないことが多く、この作品は私にとってもその中の1枚である。だからいつも書くような「百聞は一聴」なのだが、同時にこの作品から広がっていったオルタナの世界は今後も広く自分の音楽観に刺激を与えていく、そんな過程の1枚である。


こちらから試聴できます


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。