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ハートのメジャー・デビューアルバムである。イギリスのハード・ロックバンドが次々渡米して成功していたが、アメリカのハードロックというのは中々ヒットを出すバンドというのが少なかった。理由は良く分からないが、合衆国気質である意味合理的なアメリカ人は、イギリスから音楽性の高いハード・ロックバンドが次から次へと渡米してくるのであれば、何もアメリカ人のバンドは必要ないと考えていたのかもしれない。また同時にアメリカはロックン・ロールの国でもある。ロックン・ロール自体が1970年代に入り下火になってしまったのも、この国の音楽傾向が大きく変わりつつあった時代でもあった。
だが、音楽界というのは男尊女卑な社会であり女性ヴォーカルというのは一種の際物的な扱いを受けることが多く、なんでこんなバンドがヒットをするのだろうかと首を傾げるものも多かったが、このハートに関しては、いよいよ本物が出てきたという貫禄があった。まず驚いたのがアン・ウィルソンの太い声である。まだ、この頃は例えば日本でもヒットし、全米第1位シングルも出したスージー・クアトロなどは、格好こそ男っぽいがヴォーカルの声は甲高い部類であったが、アンは違う。これは本物だという予感。そして、妹のナンシーが同じバンドにギターで参加している。この髪の色が違うふたりの姉妹という効果は大きかった。太い声でしかもパワフル・ヴォーカリストのアンと、どちらかというと大人しそうでギターでしっかり姉を支える感を前面に出しているナンシーの、同じ姉妹でも違うフェロモンを出しているところが、このバンドが大ヒットする予感を醸しだしていたのであった。事実、シングル・カットされた「マジック・マン」は、丁度渡米していた際にもラジオから最も沢山流れていた曲であったと記憶している(尤も、その時は殆どシアトルに居たということもあった)。その後アンは「女ロパート・プラント」とも呼ばれる様になったが、シアトル出身のこのグループは当時最も成功したアメリカのハード・ロックバンドであったという言い方も出来る。また、このアルバムは「ドリームボート・アニー」というタイトル曲が違う3つのテイクで収録されているが、この曲がアクセントになって、シングルから予想するハートというバンドのイメージとは、また違った面を出しているところが、なんともファン泣かせで嬉しい部分である。実はハートはバンドのメンバー編成を次々と変えていく。途中でナンシーが一度だけメンバーを外れたことがあったが、基本的にはこの姉妹が中心のバンドであるといっても過言ではない。
純アメリカン・ロックというジャンルでリンダ・ロンシュタットも出てきて、いよいよフィメール・ヴォーカル全盛期へとアメリカ音楽も移行していくが、やはりこのハートは別格で、未だに、アン・ウィルソンを超える力強い女性ヴォーカルというのは出てきていない。しかし彼女たちの活躍が新しい女性のヴォーカルという路線をしっかり敷いてくれたのは事実で、この後、世界的にフィメール・ヴォーカリストの時代が到来する。そういう意味で、男尊女卑の音楽界に風穴を開けた功績は大きく、冒頭に書いたようにある意味ではロックン・ロール再来への期待も大きかったのである。
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私も良く歌わされましたよね、
声質が全然違うのに・・・。
確かにannieの声は普通の人には出せませんよ。