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供給過剰になってきた「シネコン」が心配です

2007-11-01 21:53:27 | 地域産業
 私の住む群馬県で「シネコン」の開館ラッシュが続いています。このままでは供給過剰になることが予想されます。最近の「シネコン」開館ラッシュに思うところを書きます。

 日本映画製作者連盟の定義によると、シネコンは「同一運営組織、同一場所、5スクリーン以上で、名称を統一している映画館」です。平成5年にハリウッドのワーナー・ブラザースがスーパーのマイカルと組んで神奈川県海老名市に出店したのが日本の第1号でした。映画会社ごとの縦割りの配給制度に縛られずに作品を上映できる、中規模スクリーンを主体に伸縮自在の上映期間を設定できるなど、効率的運用が可能になることが経営上の特徴です。
 
 当初は、保守的な映画業界ではシネコンを異端視していたようです。しかし、立地、施設の魅力、サービスで優位に立つシネコンは着実に浸透してきました。現在は、配給映画会社の東宝、松竹、東映は子会社がシネコンを展開しています。私がよく行く「伊勢崎MOVIX」も松竹の子会社が運営しています。平成19年10月31日現在で、東宝グループは55ヶ所に508スクリーン、松竹グループは27ヶ所に269スクリーン、東映グループは12ヶ所に122スクリーンを運営しているようです。そのほか、ワーナーマイカルの58ヶ所に471スクリーンなどが主要なシネコンです。

 国内スクリーン数は平成5年末に1734と過去最低を記録しましたが、翌年から拡大に展開して、平成17年には3062と増えています。シネコンが次々と開館したからです。一方、1スクリーン当たりの興行収入は平成10年の9,704万円から6,613万円に減少しています。採算ラインが7,000万円といわれ、相当数が赤字のようです。にもかかわらず、開館ラッシュが続いています。
 なぜ赤字でも出店を続けるかというと、主導権がイオンをはじめとする流通側にあるからだそうです。郊外型のショッピングセンターにはシネコンは必須アイテムとなっているからです。

 群馬県でも「シネコン」が次々と開館しています。大田市に2ヶ所、高崎市に2ヶ所、前橋市に1ヶ所、伊勢崎市に1ヶ所です。来年に開店予定の伊勢崎東部ショッピングセンターにもシネコンが開館する予定です。
 私は伊勢崎市の「MOVIX」の支配人に昨年の11月に話を聞く機会がありました。その時は、イオン高崎のシネコンが開館しており、、前橋のけやきウォークのシネコンが開館する前でした。「MOVIX」は西部モールという県内有数の商業集積に立地している強みを生かしたシネコンでしたので、この2つのショッピングセンター内のシネコンは貴社のシネコンに影響がありますかと質問してみました。支配人は、来場者調査をしていて、6割が伊勢崎市の住民、本庄市などの埼玉県が2割、前橋市方面が2割で、その他が1割、前橋市の来場の影響が出ることが予想されると話していました。なにか他社と差別化する方策はあるのですかとし質問してみました。施設改装(椅子」)して魅力アップを図ると支配人の話でした。

 各シネコンの上映ラインナップを見比べてもほぼ同じです。レディースデー割引、夫婦50才割引などのサービス方法もほとんど同じです。シネコンは差別化が難しい業種であるようです。マニア好みの映画を上映しても、収入的に期待できませんし、映画関連イベントもどれだけ収益に結びつくか疑問です。

 来年に東部ショッピングセンターのシネコンがオープンすると伊勢崎市の住民の奪い合いが始まります。「MOVIX」はますます商圏の縮小が予想されます。一方、消費者にとっては場所の選択枝が増えることはよいことなのかもしれません。しかし、過激な競争激化のため一層興行収入重視になり、選択枝の中身(映画のラインナップ)が、今より一層変わらないことで、商業主義の映画ばかりで上質の映画を見るという機会がますますなくなってしまうと思われます。

 私は小栗康平の映画「埋もれ木」をMOVIXで見ましたが、今後はそんな機会はなくなってしまうのではないでしょうか。


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