すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

道のない山

2021-03-04 10:47:22 | 山歩き

小さな尾根や谷が
切りもなく枝分かれしていた
たちまち方角を失い
ためらったり戻ったりしながら
なんとか行けそうな方へ進んだ

踏み跡らしきものを見つけても
やがてまた消えた
景気づけに歌ってみたが
茂みが鳴ったような気がして
怯えてやめた

俺っていつもこんなだな
ヌカ喜びしたり失望したり
考えることも踏み跡と同じだ
途切れたり戻ったりだ

目的地を持つのは好きじゃないから
群れを作って歩くのは
ましてリーダーの指示に従うなんて
好きじゃないから
ひとりで迷うのは仕方がない

それでも時には
誰かに会わないかなあ
会わないよなあ
なんてのはどうしてだ
来なきゃ良かったかな
何を今さらだ

崖にはばまれ
小石に足を取られ
擦り傷をつくり
へこたれて立ち停まり
それでもそうして歩くのが
嬉しくもあり
時々は意気高揚もし・・・

とつぜん樹林が切れ
枯れたススキの原に出た
小丘ひとつ向こうに
海が見えた

なんだ
あんがい低いところを
彷徨いていたのだな
登っているつもりで
降っていたのか

島影も船もない
青黒い沈黙
だが 夕日に目を向けると
ちりめんじわのカーペットロードが
招くように延びている

ああ 
それなら俺は
ひどく間違っていたわけじゃ
なかったんだ

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