すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

2020-12-28 18:46:13 | 

俺タチノ放浪生活ノ上ニ
ソノ山ハ何時モ聳エテイル

殴り倒すような太陽や
背骨を締めつける寒気に曝され
革のサンダルをひきずって砂の中を歩きながら
俺たちは喉の渇きの奥で
水を求めるようにその山を呼んでいる
草一本無い ぼろぼろに風化した
岩屑の積み重なるその山を

その山はどれくらいの距離にあるのか分からない
行く手にすぐ近く見えることもある
だが 三日三晩歩き続けても
やはりそれは 同じ遠さに聳えたままだ

砂嵐に包まれて何も見えない日には
山は確かに
すぐ傍らに迫っている
俺たちを押し潰そうとする意思を持つもののように

山の中腹に巨大な城砦のようなものが建っている
あるいは 放棄された古い僧院かもしれない
それが何時から在るのかは
古い言い伝えにも残っていない
その壁の内側には たぶん
俺たちの知らない古代の文字で
祈りの言葉が綴られているに違いない

誰も その謎を解きに行こうとは言い出さない
俺たちは日々 羊の世話に追われ 水探しに追われ
たたかいに追われ

夜 焚火を囲んで座っていると 月明かりに
その岩山と城砦が浮かび上がることがある
そんな時 俺たちは互いの目を覗き込み
そして黙る

ソノ山ハモハヤ 俺タチノ放浪生活ノ
運命ナノダ

コメント
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