星・宙・標石・之波太(しばた)

星、宇宙、標石、之波太(しばた:柴田)をこよなく愛するサイト。

H3ロケット

2016-07-21 23:30:03 | 宇宙
今日の朝日新聞

H3ロケット安く早く力持ち
JAXA基本設計完了の見出しです。

JAXAのHPを見たところ、
「ロケット」→「エンジン」→「ロケットを支える人たち」→H3ロケットプロジェクトマネージャの
岡田匡史さん
がインタビューに応じていました。

今までとは「ゴール」が違うロケット
―H3ロケットの特徴を教えてください
H3ロケットプロジェクトは、総合システムの開発です。総合システムは、ロケットだけでなく、地上
設備や打上げサービスに至る全てを含めた、システムの集合体(System of Systems)です。
H-IIAまでのロケット開発のゴールは試験機の打ち上げでした。試験機打ち上げの成功を見届けて
プロジェクトは終了し、その後は打ち上げ輸送サービスにバトンタッチしています。
しかしH3ロケットは、「20年間使える状態にする」ことがゴールと言えます。20年間使うためには
何が必要か。大事なことは、使う人が自身のこととして使うものを考えることです。
我々JAXAは、ロケットの運用、つまり打上げサービスを担う企業として、三菱重工さんを選ばせて
もらいました。三菱重工さんに運用をお任せする以上、三菱重工さんが使いやすいロケットに仕上げる
ことが自然だと考えています。

―メーカーとの役割分担も変わりましたか?
(略)
―新しい体制で混乱はありませんでしたか?
(略)

プロジェクトマネージャの仕事とは?
―これまでJAXAではどんな業務を担当してきましたか?
(略)
―エンジニアリングの強化とは、具体的にどんなことでしょうか
(略)
―岡田さんは、調整型、牽引型、どんなプロマネですか?
(略)

ロケットを当たり前の「製品」に
―ロケットのアピールポイントを教えてください。
(略)
―自動車や家電も、基本的にはコンセプトが先ですよね。

はい、当たり前のことをロケットでもやろうとしています。まず取り扱い説明書を作ってから、
製品を設計するというアプローチですね。H3ロケットでアピールしたいのは「特別な技術」では
ありません。日本の強みであるモノ作りの技術や他の産業の優れた技術を活かして、本当に使い
やすいロケットを作る。それで世界に打って出たいと考えています。
―商業打ち上げでは、H-IIAは苦戦しました。H3での勝算は。
(略)

カギを握るエンジン開発はこれからが本番

新規開発する液体酸素と液体水素を用いた、大型ロケットエンジン(LE-9)


―第1段には新型の「LE-9」エンジンが使われますね。
2016年度の後半には、最初の試験用エンジンが完成していて、種子島で燃焼試験を始めている
はずです。そのあたりから、このプロジェクトはいよいよ大きな山場にさしかかってくること
でしょう。今までの開発は、大半が設計や解析といった机上の活動だったので私もまだなかなか
実感が湧かないのですが、これから3年ほどかけて、燃焼試験を次々に実施してゆきます。
―新型エンジンは何が起きるか分かりませんね。
はい、新型エンジンは手強いと思います。「ロケットエンジンは魔物」と思っています。エンジンは
どれだけ事前に研究しておいても、エンジン燃焼試験をしてみると容赦なくトラブルに見舞われる
可能性があます。今回は新しい開発手法を取り入れ、事前に開発のリスクを低減するよう入念に
準備しています。
エンジン燃焼試験でのトラブルのリスクを下げるために、これまで、燃焼器とターボポンプの試験を
単体で行ってきました。H-IIで使われたLE-7エンジンの開発当時、私はターボポンプの試験担当
だったのですが、かなり苦労しました。そういう問題は先に潰しておこうということで、助走を
始めているわけです。
今後、燃焼器とターボポンプを組み合わせ、燃焼試験を行います。やってみないと分からない部分も
ありますが、一番クリティカルな振動や安定性の課題は、もう大体目処が付いていて、潰せる状態に
なってきていると思います。
但し、これで十分とは言い切れません。逆にロケットエンジン開発の醍醐味がここにあるとも言えます。
―エンジンが遅れるとロケットも遅れてしまう。
そういう意味で、とにかくエンジンが勝負です。勝負に少し光が見え始めてくるのが2016年度の末頃
かなと。そのころを楽しみにしていてください。

2020年度の初打ち上げに向けて
―H3ロケットのロゴに込められた思いは。

プロジェクトチームの中でいろいろ議論を重ね、みんなの気持ちを1つにしたいという思いで提案
しました。「これからの日本の宇宙開発を支えるH3ロケットが力強く宇宙に向かってゆく姿」を
シンプルに表現したかったので、幾何学的なラインで構成してあります。オレンジはH3のイメージ
カラーです。その両脇の白は、固体ロケットブースタと噴煙を表しています。
H-IIAもそうですが、機体のオレンジ色は極低温の液体酸素と液体水素のタンクの断熱材の色です。
個人的には白もいいと思いますが、塗料はコストも質量も余計にかかってしまいますので、省いて
います。
模型では、同じオレンジ色でもH-IIAと比べて少し淡い感じになっているのが分かるでしょうか。
実はこの断熱材のオレンジ色は、時間がたつと紫外線により濃くなるんです。H3ロケットは製造に
かかる時間も大幅に短縮されるので、色の変化も少なくなるはず。その期待を込めて、"若々しい"
断熱材の色にしてあります。
―今後の開発スケジュールはどうなっていますか?
昨年度1年をかけて基本設計を行い、2016年度の初頭から詳細設計に移りました。先ほど述べました
ように、2016年度の後半にはエンジンの燃焼試験を開始して、2018年度頃から試験機を作り始めます。
ロケットの開発はミッション要求の設定から始まり、ロケットや設備など全てを含む総合システム、
ロケットや設備それぞれのシステム、構造系、電気系、エンジン、固体ロケットブースタなどのサブ
システム、さらにその下のコンポーネントや部品と、段階的に細分化しながら設計してゆきます。
その都度、ミッション要求を満たしているかどうかの確認をすることが重要です。そして、試作品が
でき始めると、今度は逆に部品、エンジン、機体と、段階的に統合してシステムが設計どおりに動作
するかを試験よって検証します。2018年度から2020年度前半にかけては、次々に統合や試験を繰り
返しているはずです。
―あと4年というと、あまり時間が無い気もしますね。
本当に、あっという間ですね。まだ胃が痛くなるような状況ではありませんが、これから何が起こるか
分からないということを考えて茫然とすることもあります。でも、どちらかというと楽しみの方が
大きいですね。

試験機打ち上げの注目点は
―H3はブースタ無しの形態があるのが面白いですね。

はい。固体ロケットブースタ無しが、H3ロケットの最もシンプルな形態で、これが代表的なスタイルです。
試験機1号機もブースタなしになる予定ですが、第1段の液体エンジンだけでリフトオフするというのは、
今までのHシリーズでは無かったことですね。
―個体ブースタが無いと、どんな打ち上げになるのでしょうか。
煙は減ると思います。海外では、米国のデルタ4ロケットが同じように液体水素の第1段エンジンだけで
飛んでいくので、参考になるかもしれません。実際にH3ロケットがどんな姿で飛んでいくのかを見るのも
楽しみの1つです。
固体ブースタは力持ちですので、それがないと、リフトオフ直後のスピードはゆっくりになります。
また、固体ブースタがあると点火して一気にパワーが上がりますが、液体エンジンでは5秒ほどかかります。
そのままだと、途中で重力とパワーが釣り合ってふわっと浮いてしまうので、十分にパワーが上がるまで、
ロケットを捕まえておく機構も射点に追加します。
その他外観としては、衛星を保護する先端部分のフェアリングも形が変わります。H-IIAのフェアリングは、
先端の円錐部とその下の円筒部がはっきり分かれていましたが、H3はオジャイブ形状という、もっと丸みを
帯びた形になっています。この方が、搭載した人工衛星にとって優しい環境になるんです。
―最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
このプロジェクトには皆さんから納めていただいた貴重な予算を投入してもらっていますので、その意味で
最終的なお客様は皆さんだと思っています。その点をプロジェクトチームのメンバ全員で意識して、
皆さんに状況をきちんとお伝えしつつ、開発を進めて行きます。
厳しい目、温かい目で見守っていただくことが、私達プロジェクトチームの原動力になります。
どうかよろしくお願いいたします。そして、東京オリンピックの年2020年度の初打ち上げを楽しみにして
いてください。
---------------------------------------------------------------------------------
「―個体ブースタが無いと、どんな打ち上げになるのでしょうか。」
JAXAさんでも、このような初歩的なミスを犯すのでしょうか。
「固体ブースタ」ですよネ。

JAXA角田宇宙センターでも今秋から関連の試験を行う予定とか。

この図、まさしく角田宇宙センターの研究成果が活かされたものです。

2020年度のH3ロケットの初打ち上げの成功を祈ります。
この年は、東京オリンピックの年、そして、はやぶさ2が小惑星「リュウグウ」のサンプルを
持って地球に帰還する年です。
今から楽しみです。