NHKマイあさラジオ「社会の見方・私の視点」で、10月3日(火)に放送された「世界で今論議されている金融政策の課題※白井さゆり(慶應義塾大総合政策部教授)」の話は、日本の経済状況を知るよい手がかりになります。昨日(10/10)、NHKオンラインのストリーミングで聞きました。この放送は10/31まで聞くことが出来ます。
それによると、日本は現在、アベノミクスや日銀の異次元金融緩和をもってしてもインフレターゲットの2パーセントをなかなか達成出来ないでいますが、このような状況は、不思議なことに世界の各地で起こっているようなのです。最近の若干の物価高はエネルギー価格の上昇によるものということで期待の内容ではありません。そして、日本もアメリカも雇用の状況はかなり改善されているのに、所得が上がらないことも類似点です。概ねどの国も企業収益がよく経済状況もよいのにお金が回らないことが問題になっています。企業も家庭もお金を貯め込んでいるようなのです。つまり、どこの国も「潜在的な経済成長率」に陰りがみられるからだと考えられます。
このようなこと(潜在的な経済成長率の陰り)は、世界では「高齢化」と「所得格差」が関係している(※要因)ようです。
要因としての「高齢化」が進むと労働者は長く仕事に就き、収入に基づいて貯蓄も殖やすわけで、寿命も延びて後何年生きられるか不明の中で長生きのリスクに備えようとする面があるとのこと。当然ながら、既に私たちもそのような心境になっているのではないでしょうか?
さらに要因としての「所得格差」については、所得格差が進むと社会全体としては消費が進みにくくなり貯蓄が増える傾向があるとのこと。それは、高額所得者は使い切れない分を貯蓄に回し、低所得者は稼いだ分の大半を消費に回さなければならないので高所得者よりはずっと消費傾向は強いのですが、それ故、高所得者にばかり富の集中が起きると使い切れないお金がどんどん貯められ、低所得者では消費が低迷するというわけです。この状況は特にアメリカで見られるようです。
企業も資本を貯め込んでいるわけですが、日本でも企業の内部留保が全体で400兆円とも言われて、先日、小池さん(希望の党党首)が内部留保に課税という案も出しました。(この案は、実のところ課税が二重になるのではないかなどの問題がたくさんあり、よほど議論しないと実現は難しいのではないかと思われます。)そして、世界の多くの企業でも設備投資が活発でなく、賃金もあまり上げずに内部留保が進んでいるようなのです。それは、経済の先行きの不確実性から不安になっているためと言われます。
結局、これらの要因に対する抜本的対策が必要なわけですが、そこが難しい!?このような構造的な問題があるわけですが、こういう状況の中で「金融緩和」を続けていくことについて二つの見方があると白井氏は言われます。一つはインフレ目標を達成できない中で金融緩和を止めてしまうと日銀等の中央銀行の信用を低下させてしまうことについての恐れをもっているとのこと(だから金融緩和を止めたくても止められない?)。日銀もやはり同様です。一方、このまま金融緩和を続けても副作用が大きくなるだけとの見方もあり、世界の大勢が副作用を心配しているようなのです。だから、アメリカでは既に金融緩和を徐々に減らしていくことを考えて取り組んでいます。ただ、金融緩和を減らすと、これまで金融緩和によって増えていた株価や不動産等の資産価格が下落してしまう恐れがあるので簡単ではないとのことです。いわゆる、異次元緩和の出口戦略の問題に突き当たるようなのです。やはり、不安になります。(土)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます