マフィアの跡目を継いだ三男マイケルは妹の夫、カルロが敵とつながる裏切り者であることを知る。米映画の「ゴッドファーザー」(一九七二年)。ファンならこの後の展開を震えながら思い出すか▼裏切りが発覚し、おびえるカルロにマイケルはどういうわけか優しい。「心配するな。俺が妹を不幸にするもんか」「俺はおまえの息子の名付け親だぞ」-。冷酷なマイケルもさすがに妹を悲しませたくなかったか。甘くなかった。許したふりをしてカルロをやはり「始末」する▼事実は分からない。分からないのだが、欧米に広がる臆測が当たっているとすれば映画顔負けの背筋も凍る展開だろう。六月、民間軍事会社ワグネルを率いてロシアで武装反乱を起こしたプリゴジン氏が死亡したと伝わる▼モスクワからサンクトペテルブルクに向かう自家用ジェット機が墜落し、これに搭乗していたという。地対空ミサイルで撃墜されたとの情報もあると聞けば、プーチン大統領による「粛清」をどうしたって疑ってしまう▼プーチン大統領には、裏切り者を決して許さぬ人物との評がある。プリゴジン氏が反乱後も大手を振って歩いていたのが少々、不思議だったが、やはり、大統領が許すわけもなく相手が油断するのを待っていたか。世界中にひそひそ話が広がる▼ロシアの中で、何が起きているのか。闇の奥をのぞくのが恐ろしい。
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