東京に住む会社員が夏休みに地方の実家への帰省を計画していた。その旨を電話で伝えるとどうもお母さんの態度がおかしい。「帰って来てくれるのはうれしいんだけどね…」▼言いにくそうにこう続けたそうだ。「来るのなら、家族全員、検査で陰性を確かめてからというわけにはいかないかしら」▼新型コロナウイルスへの不安。近所の目も厳しい。万が一にもわが子の東京からの帰省をきっかけに地元で感染が拡大したら…。お母さんの胸の内がよく分かる▼東京での一日あたりの新規感染者数が急増している。四月以降の推移グラフを見れば、一度は下がったカーブが再び上昇。重症者が少ないのが救いだが、U字のグラフ曲線は不気味な怪物が口を広げているように見えてくる▼親でさえ「東京の人」を警戒したくなる状況である。政府の観光支援事業「Go To トラベル」から東京都発着の旅行や都民の旅行を除外せざるを得なかったのもやむを得ぬところか。この事業自体が時期尚早で、コロナの嵐の中では旅行へ行ってという政府の笛太鼓にも国民は気持ちよく踊れない▼観光業の悲鳴も聞こえる。経済と感染防止の両立の難しさは分かるが、まずは拡大傾向に歯止めをかけたい。怪物の口角を下げなければ旅情もなにもあるまい。あのお母さんが帰省の子どもを心からの笑顔で出迎えられる状況をつくりたい。
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