月の軌道上で最初に流れた曲は、フランク・シナトラの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」だったそうだ。中秋の名月は過ぎたが、月の美しい季節。月光についハミングも出るか▼「お月さまに連れてって。お星さまの間で遊ばせて」-。一九六九年、アポロ10号の船内で、宇宙飛行士たちがカセットテープでシナトラの軽快な歌声を聴いた。その曲は当時、アポロ計画のテーマソングのひとつのようになっていたそうだ▼六回の月面有人着陸を成功させたアポロ計画が終了したのは、七二年。それから四十五年後の今、「もう一度、お月さまに連れていってちょうだい」というところだろうが、果たしてヒットするかどうか。米国のペンス副大統領が最近、NASAの宇宙飛行士を再び月へと送り出したい考えを表明した▼宇宙開発競争においてロシアや中国に主導権を奪われつつあると危機感を抱くトランプ政権は、この計画で一気に巻き返しを図る狙いがあるという。月面上に火星やその先に向かうための「拠点」を建設したいというから壮大な計画である▼大阪万博の「月の石」に熱狂した日本のアポロ世代は興味津々かもしれないが、悲しいことに、実現目標時期もない上、予算確保のめどもない▼過去の栄光を想起させる、大風呂敷を不人気政権が広げたように見えなくもなく、どうもハミングもかすれがちである。
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