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今日の筆洗

2023年11月28日 | Weblog
「土の上には床がある/床の上には畳がある/畳の上にあるのが座蒲団(ざぶとん)でその上にあるのが楽といふ」。詩人、山之口貘(ばく)の「座蒲団」。「楽に坐(すわ)った寂しさよ」と続く▼「寂しさ」には理由がある。上京後、下宿代が払えず、放浪生活を送った山之口。座蒲団の「楽」が分不相応に思え、どうも落ち着かなかったらしいが、読んでいる方は詩人が土の上からやっと「楽」にたどり着いたことにほっとする▼パレスチナ自治区ガザの今に、その詩を思った。イスラエルとイスラム組織ハマスの合意はひとまず守られ、ハマス側は拉致していた人質を解放し、イスラエル側は戦闘を休止している。詩でいえば戦闘という冷酷な土の上に薄い「床」ができたようなものか▼とはいえ、危うい「床」だろう。戦闘休止期間は28日で切れる。イスラエル、ハマスの双方とも延長に前向きと伝わる。なによりだが、この機をとらえ、「床」をさらに安定させ、停戦の「畳」、和平の「座蒲団」へと歩みが進むことを願う。国際社会も、その積み重ねを後押ししたい▼「なんにもなかった畳のうへに/いろんな物があらはれた(中略)/桐(きり)の簞笥(たんす)があらはれた/薬罐(やかん)と/火鉢と/鏡台があらはれた」…。結婚後の山之口の詩「畳」▼底冷えする「土」から鏡台まで備えた家になったか。かの地を、空爆と悲鳴の続く「土」なんぞに二度と戻したくない。