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今日の筆洗

2023年01月30日 | Weblog

ドイツの作家、エンデの『モモ』にこんななぞなぞがある。三人のきょうだいが一つの家に住んでいる。「まるですがたがちがうのに、三人を見分けようとすると、それぞれたがいにうりふたつ」。これだけでは、分かるまい▼こう続く。「一番うえはいまいない、これからやっとあらわれる」「二ばんめもいないが、こっちはもう出かけたあと」「三ばんめのちびさんだけがここにいる、それというのも、三ばんめがここにいないと、あとの二人は、なくなってしまうから」▼答えは一番うえが「未来」、二ばんめは「過去」、三ばんめは「現在」である。一つの時計を見て、うろたえ、「三ばんめのちびさん」を心配する。時計とは「世界終末時計」▼米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」の発表によると、人類滅亡を午前零時に見立てた「終末時計」の残り時間は「九十秒」となった▼過去一年の世界情勢などを踏まえ、あくまでたとえとして示しているが、昨年から十秒も針は進み、一九四七年の創設以来、最も「終末」に近づいた。ロシアによるウクライナ侵攻や核使用の懸念、気候変動。針を進める理由が世界から消えない▼「三ばんめがいないと、あとの二人は、なくなってしまう」…。現在が消えれば過去も未来もやって来ない。当たり前のなぞなぞの答えが人類への警句のように聞こえる。