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今日の筆洗

2023年01月17日 | Weblog
三両のお金を拾った男が落とし主に届ける。この落とし主が頑固な江戸っ子で受け取りを拒否する。いったん俺の懐から離れたのだから、俺のカネじゃない。届けた男も江戸っ子で、そんな道理はねえとつっかえし、取っ組み合いとなる▼落語の「三方一両損」。南町奉行の大岡様がどう裁いたかはご存じだろう。二人のまっすぐさに越前守(えちぜんのかみ)は一両を加え、四両のほうびを出し、これを二人で二両ずつ受け取らせる。元は三両。大岡様を含め三人とも一両ずつ損をすることでまるく収めた。奉行が一両を出す理屈はなかろうが、これも知恵か▼複雑な解決策に大岡裁きを思った。戦争中、日本の企業が朝鮮半島の人々を働かせた徴用工の訴訟問題である。韓国側から解決に向けた知恵が出てきた▼元徴用工は日本企業に賠償を請求し、韓国最高裁が支払いを命じている。日本側は徴用工問題は一九六五年の日韓請求権協定で解決済みという立場。今回の解決策はこの賠償金を韓国の財団が肩代わりするという内容である▼肩代わりとはいえ、見方によっては日本側は賠償に応じたことになる。日本企業のお金で償ってほしい元徴用工側も納得しにくい▼韓国の財団が肩代わりするというのも分かりにくいが、それぞれが「損」をがまんしても日韓関係に深く刺さったトゲを抜こうということなのだろう。「これにて一件落着」となるか。